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地球温暖化とラニーニャ現象で寒い冬(あぜみち気象散歩66)  2018-02-28

●気候問題研究所 副所長 清水輝和子  

 
寒くて長い冬
 今年の冬は寒かった。初冬の寒波は早くも11月半ばにやってきて、本格的な寒さとなった。1月中旬後半に全国的に寒さがゆるみ気温が変動したが、大寒過ぎから断続的に寒波となり、2月もきびしい寒さが続いた。2013年以来5年ぶりの、寒くて長い冬だった(図1)
 

図1 地域平均気温平年偏差時系列 (2017年11月~2018年2月)
気象庁の図を基に作成

 
 日本海側は各地で大雪となり、農地ではビニールハウスの損壊、果樹などに被害が出ている。また、太平洋側でも1月22日には太平洋岸を低気圧が通って関東甲信から東北地方で大雪となり、野菜の価格が一段と上昇した。農水省の2月23日発表によると、今冬の大雪で農作物等の被害額は27億4000万円に上り、そのうち農業用ハウスは22億3000万円にもなった。
 また、厚生労働省の発表によると、きびしい寒さでインフルエンザの全国の患者数は2月4日までの1週間に過去最高を記録し、3週連続で最多を更新した。
 
断続的に寒波
 昨年は、11月半ばから12月中旬にかけてほぼ全国的に寒気が入り、寒くなった(図1)。今年に入ってからは、西・東日本中心に寒気が入り、1月中旬前半と大寒過ぎ、立春以降と断続的に強い寒気が南下した。寒気の吹き出しは、1月は中国大陸北部から北陸地方へ、2月前半は西日本方面が中心だった。1月12日には新潟で8年ぶりに80cmの積雪となり、大雪のためJR信越線の列車が立往生した。
 2月3~8日の立春寒波では、北陸地方を中心に平地でも大雪になった。季節風が朝鮮半島北部の高い山で2つに分かれ、日本海で合流して雪雲が発達し、北陸地方に次々と入って局地的大雪となった(図2)。雪のため国道ではトラックや車の立往生が相次いだ。
 

白頭山脈で分流した風は日本海でぶつかり雪雲が発達
図2 気象衛星画像(2018年2月5日12時) 気象庁の画像を基に作成
 
 福井県では度重なる大雪で除雪が間に合わず、ビニールハウスなどにも近づけない状況になった。福井市の積雪は2月6日、「56豪雪」と呼ばれる1981年の豪雪以来37年ぶりに130cmを超え、7日には147cmに達した。大雪のため物流は混乱し、ガソリンや灯油など燃料不足も深刻化した。日本海側の積雪の深さは2月19日には北陸地方を中心に平年の1.5時から2倍に、多い所で3倍に達した(図3)
 

図3 積雪の深さの平年比%(2018年2月19日18時) 気象庁
 
 太平洋側でも、1月22日は関東地方を中心に大雪となった。東京都心の積雪は23cmに達し、2014年2月以来4年ぶりに20cmを超えた。午後2時頃から降り始めた雪で交通網は乱れ、早めに帰宅した通勤者で首都圏の駅は大混乱となった。低気圧の通過後は強い寒気の南下により、25日の最低気温は都心で-4℃まで下がり、48年ぶりのきびしい冷え込みとなった。
 
極ウズ崩壊続く
 今冬の寒波の主な原因は昨秋に発生したラニーニャ現象で、2月も続いているとみられている(あぜみち気象散歩65参照)。
 ラニーニャ現象の発生で、太平洋赤道付近の海面水温は東部で平年より低く、西部のフィリピン沖からインドネシア周辺で高くなっている(図4)。ラニーニャ現象の影響で偏西風が大陸から日本にかけて蛇行して、寒気の南下しやすい状態が続いた。
 

今冬はラニーニャ現象
図4 海面水温平年差(2018年2月上旬) 気象庁
 
 とはいえ、前回の「あぜみち気象散歩65」で指摘したように、今冬の寒波の原因はひとつではない。今冬の特徴としてあげられるのは、北極付近の高気圧だ。通常は「極ウズ」と呼ばれる低気圧が北極付近で成長し、寒気を溜める。溜まると寒気が放出され中緯度へ南下し暖気と混ざりあい、再び北極では寒気が蓄積される、というように北極付近では寒気の蓄積と放出が繰り返される。ところが、今冬は蓄積する時期がなく、それどころか極ウズは大きく崩れて寒気が中緯度に南下し、極ウズの崩壊状態が続いている。図5は北極点を上から見た上空5000m付近の天気図で、昨年11月から今年1月の3か月間の平均図だ。北極付近は低気圧ではなく、高気圧が居座り「極ウズ崩壊」が続いている。「極ウズ崩壊」は昨年10月に始まり、今年2月にかけて5か月もの長期にわたり続いているのだ。
 

北極海は高気圧(極ウズ崩壊)続く
図5 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2017年11月~2018年1月(平年値は1981年~2010年の平均値)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 「極ウズ崩壊」は通常は続いても2か月程度だが、1990年代後半から次第に増える傾向にあり、2010年以降は4~5か月も連続する年が現れるようになった。北極付近に寒気が溜りにくくなっているようだ。
 
北極海の海氷減少
 この冬北極付近の海氷が少ない。海氷面積が1年中で最も小さくなるのは9月頃で、昨秋は1979年の観測開始以来7番目に小さかった。海氷は冬になると面積を広げていくのだが、今冬は広がりが遅く、年末頃には同時期として過去最小の面積になった。今年に入っても拡大は遅れ、記録的に小さい日が多くなっている。
 北極海の海氷が少なくなり、氷のない面積が広がると、太陽光線の熱を吸収しやすくなり、さらに海氷を溶かして面積が少なくなる、という悪循環になる。夏季も冬季も海氷の減少に歯止めがかからない状態になっていると考えられている。
 北極海の海氷が少ないと北極付近に寒気が蓄積されにくいと考えられ、極ウズ崩壊の一因になっている可能性がある。今冬は寒気が北極に蓄積されず中緯度に南下する状態が続き、寒冬の一因になっている。
 また、ラニーニャ現象の冬は、ロシア西部から北極海の沖合で高気圧が発達する傾向があり、今冬は寒波の始まった11月半ばから続いている(図5)。そのうえ、日本の東のアリューシャンからベーリング海にかけても高気圧が発達したため、寒気が東に進むことができず中国から朝鮮半島、日本に南下した。平昌冬季五輪では前半を中心にきびしい寒さとなり、寒波が競技に影響を与えた。
 気象庁の「温暖化予測情報第9巻」によると、今世紀末には日本の冬は5℃程度高くなると予測されている。温暖化が進行する過程では、寒気の南下しやすい大気の流れが現れて、今年のような長くきびしい寒さの年もあると考えられる。北極海の海氷と気候の関係については研究が進められているが、北極海は陸地がないため観測データが少なく、気候の予測や研究が難しい。北極海の海氷が消滅すると大気の流れはどう変わるのか、まだ詳しいことは分かっていない。

 
 
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