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台風災害の秋(あぜみち気象散歩70)  2018-10-30

●気候問題研究所 副所長 清水輝和子  

 
連続して非常に強い台風上陸
 異常気象が相次いだ夏に続き、この秋は台風の災害が多かった。9月は21号と24号が非常に強い勢力を保ったまま上陸した。10月にも台風25号が日本海を北上し、強風や高温をもたらした。強風の影響で倒壊した建物の下敷きや転落などにより、21号による死者は14人、重軽傷は943人に上り、24号では死者4人、重軽傷者213人と、連続して甚大な被害が発生した。
 
近畿地方を縦断した台風21号
 台風21号は8月28日に南鳥島近海で発生し、日本の南海上を北西に進んだ(図1)。9月3日には東よりに向きを変えて、4日12時頃に徳島県南部に上陸した。中心気圧は950hpa、中心付近の最大風速は45m/sと25年ぶりに非常に強い勢力をもった台風の上陸だった。その後14時頃に神戸市に再上陸、近畿地方を縦断し日本海を北上したのち、5日9時に間宮海峡で温帯低気圧に変わった。
 

4日12時頃徳島県南部に上陸し、近畿地方を縦断
図1 台風21号経路図(2018年8月28日~9月5日)(気象庁)
 
 3~5日までの総降水量は、愛知県豊根村茶臼山で390.5mmに達し、9月の記録となるなど、四国や近畿、東海地方で300mmを超える大雨が降った。
 高知県室戸岬では最大瞬間風速55.3m/s、大阪府関西空港では58.1m/sを記録し、四国や近畿地方で猛烈な風を観測した。台風の中心近くで進行方向の東側になった大坂湾では吹き寄せる風と気圧の低下、満潮の時刻が重なり潮位が上昇したため、大阪市で329cm、神戸市で233cmなど、過去の最高潮位を超える高潮が発生した。
 関西国際空港では高潮で滑走路や施設が浸水し、対岸を結ぶ連絡橋はタンカーが衝突して通行ができなくなり、利用客約3000人が空港内で一夜を明かした。4日には関西や中部、北陸地方を中心に広い範囲で停電が起き、新幹線の運転見合わせや航空機の欠航が相次いだ。JR西日本や私鉄の一部では、台風による被害に備えて事前に予告運休が実施された。
 農業関連では台風の直撃をうけた近畿地方を中心に、農業用ハウスや施設の被害が大きかった。北海道や青森県ではトウモロコシ倒伏やリンゴの落下など、北日本でも強風の影響が広がった。
 
台風24号で塩害
 台風24号は、9月24日マリアナ諸島近海で発生して北西に進み、29日には大型で非常に強い勢力となって沖縄地方に接近した(図2)。その後北東に向きを変え、種子島付近を通り、30日20時頃に和歌山県田辺市付近に上陸した。その後24号は東日本から東北地方を縦断し、10月1日12時頃には北海道の南東海上で温帯低気圧に変わった。
 

30日20時頃和歌山県田辺市に上陸し東日本~東北地方を縦断
図2 台風24号経路図(2018年9月22日~10月1日)(気象庁)
 
 24号は南西諸島や西・東日本の太平洋側を中心に、広範囲で大雨や暴風、高波、高潮をもたらした。9月28日~10月1日までの総降水量は九州、四国、東海地方で400mmを越えたところがあった。鹿児島県奄美市笠利では最大瞬間風速52.5m/s、東京都の八王子では45.6m/sの猛烈な風を記録した。上陸時の中心気圧は950hpaだったうえ、暴風のため潮位が上昇し、和歌山県串本町では最高潮位254cm、三重県尾鷲市145㎝など過去の最高潮位を超えた。
 
 関東地方では南よりの暴風が吹き荒れた影響で塩害が発生した(図3)。太平洋沿岸では海の波しぶきが風で運ばれ、キャベツ、レタス、ダイコンといった露地野菜が主に被害をうけた。植えたばかりの作物が塩分で枯れ、種まきや定植をやり直すなどの対策を迫られ、年末以降の品薄が懸念されている。
 

関東の沿岸部では南よりの強風により塩害が発生
図3 アメダス風向・風速関東地方(2018年10月1日02時)(気象庁)
 
強風と高温をもたらした台風25号
 台風25号は9月29日マリアナ諸島で発生し、北西に進んで沖縄付近を通過した(図4)。那覇では5日に最大瞬間風速36.2m/sを観測するなど、猛烈な風が吹き荒れた。強い勢力のまま九州の西海上を北上し、6日には朝鮮半島南部をかすめて、日本海に入った。スピードを上げながら北上し、日本海北部で7日3時に温帯低気圧に変わった。温帯低気圧は津軽海峡を東北東に進み北日本を通過した。
 

台風25号は日本海を北上
図4 台風25号経路図 (2018年9月29日~10月6日)  気象庁
 
 台風の接近時の4~6日は九州から四国に秋雨前線がかかり、大雨となった。6日までの72時間降水量は、高知県吾川郡仁淀川町鳥形山で420mm、宮崎県宮崎市田野で394.0mmなど、多いところでは200~400mmにもなった。
 6日には日本海を進んだ台風に向かって南よりの強風が吹き、日本海側では、フェーン現象により気温が上昇した。新潟県三条市三条で36.0℃、長岡市長岡で35.3℃など4地点で猛暑日、188地点で30℃を超える真夏日を観測した。翌日7日も関東や東海地方で気温が上昇して、88地点で真夏日となった。
 台風から温帯低気圧に変わった後も青森県八戸で34.9m/s、岩手県の釜石で37.7m/sの最大瞬間風速を記録し、青森県では一部でリンゴに傷や落下が見られた。
 
南東海上で強かった太平洋高気圧
 この秋は、日本の南東海上で太平洋高気圧が強かった(図5)。とくに9月はアリューシャンから東シベリア北極海沖に高気圧が居座ったため、寒気は東へ進めず、中国北部から日本海に南下した。上空の偏西風は大きく蛇行して日本付近では南西の風が続き、湿った空気が入りやすかった。このため、東北地方から九州にかけて9月は雨が多く、日照時間も平年の40~80%と少なかった(図6)。長ネギやハクサイ、ブロッコリーなどの秋冬野菜は9月の長雨と日照不足、台風により作付けや生育が遅れ、根腐れなどが発生した。昨年に続き、この秋も農作物は天候不順の影響を受けている。
 

9月太平洋高気圧が日本の南東海上で強かった
図5 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2018年9月(平年値は1981年~2010年の平均値)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 

9月日照不足と多雨
図6 降水量・日照時間平年比% (2018年9月) 気象庁
 
 台風は、太平洋高気圧が南東海上で強かったので高気圧の縁辺をまわって接近し、日本付近で弧を描くように偏西風に乗って北東進した。24号が接近して太平洋高気圧を強めるように進んだので、25号は九州の西の海上を北上し、台風の東側の太平洋高気圧をさらに強めた(図7)。10月だというのに太平洋高気圧が日本付近を覆ったため、25号は日本海を北上した。日本海を北上する台風は通常は8~9月に多い。10月は日本海に向かっても、日本海に入る前に熱帯低気圧や温帯低気圧に変わり、勢力を弱める。統計のある1951年以降では、10月に日本海を進んだ台風は、今年の25号を入れても6個しかない。そのうち1990年代後半以降は4個で、20世紀末から増える傾向にある。温暖化で太平洋高気圧が10月も強まっているためと考えられる。
 

太平洋高気圧強まり、台風25号日本海を北上
図7 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2018年10月5日(平年値は1981年~2010年の平均値)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 3つの台風が通った南海上の9月の海面水温は高く、図8のように、台風が発達する28℃以上の海域が広がっていた。とくに南西諸島周辺は29℃もあり、台風が勢力を保ったまま接近した。熱帯低気圧の予測研究によれば、温暖化すると非常に強い台風の数が増えると予想されている。予測が現実になっているかのように、今年は非常に強い台風が2個も上陸した。また、10月22日にマーシャル諸島で発生した台風26号は、24日に中心気圧905hpa、中心付近の最大風速60m/sと、猛烈な台風に発達した。今後、温暖化が進行すると台風はどうなるのか、具体的なことを知りたいが、台風の将来予測では不確実な点も多く、詳しいことは分かっていない。
 

9月の南海上は28~29℃以上で台風発達
図8 北西太平洋月平均海面水温(2018年9月)  気象庁
 
 今年10月国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の総会が韓国で開かれ、8日に特別報告書が発表された。報告書によると、世界の平均気温は、産業革命よりすでに約1℃上昇しており、現状のままで温暖化ガスが排出され続けた場合、早ければ2030年にも気温上昇は1.5℃に達し、さらに上がり続けると予想されている。
 この秋、2つの非常に強い台風の上陸を経験して、温暖化の脅威とはどのようなものかを垣間見る思いがした。温暖化が進行すれば、今後さらなる台風の脅威が待ち受けていることだろう。

 
 
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