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寒暖大変動の秋(あぜみち気象散歩94)   2022-10-26

●気候問題研究所 所長 清水輝和子  

 
週末ごとの台風、残暑のち気温大変動
 9月は残暑がきびしく、むし暑い日が多かった。記録的に強い台風の上陸や速度の遅い台風などによって大雨や暴風の被害に見舞われた。2回あった連休は週末ごとに台風が来襲し、楽しみしにしていた外出や旅行は足止めされた。台風が去ってからは秋晴れが続いたが、上空の太平洋高気圧は強く日中は暑かった(図1)
 

9月残暑、台風 10月気温変動
図1 地域平均気温平年偏差5日移動平均時系列(2022年8月~10月)(気象庁)
 
 10月初めも暑い秋晴れで、4日の東京は都心で29.5℃と真夏日に近い気温になったが、その2日後の最高気温は15℃、翌7日は13℃と12月並まで急降下した。長かった夏の影響で疲れた体には、大きな寒暖差が辛く感じる。気温の変動は11月にかけても続きそうだ。
 
9月台風多発
 8月までの台風発生数は11個と平年より約3個少なかったが、9月は7個で平年より2個多く、そのうち6個が日本に接近した。沖縄では4個も接近し、11号と12号は台風の動きが遅かったために、長時間にわたり暴風雨に見舞われた(図2、3)
 

台風11号、南西諸島付近をゆっくり北上、のち日本海北上
図2 台風11号経路図 (2022年8月29日~9月6日)気象庁
 

台風12号、先島諸島をゆっくり北上
図3 台風12号経路図(2022年9月8~16日) 気象庁
 
 気象庁気象研究所の分析研究によると、台風の移動速度は、2000~2019年の20年間は、1980~1999年に比べて36%も遅くなった。温暖化で太平洋高気圧が強まり、偏西風の南下の時期が遅れる傾向にある。秋になっても日本周辺では台風を流す風が弱く、偏西風は北に離れているため、台風の移動速度が遅くなっていると考えられる。
 
 台風11号は、8月28日南鳥島近海で発生し、30日には急速に発達して中心気圧は920hPaまで下がり西進した。9月3日から4日朝にかけて宮古島付近を通る頃は中心気圧950hPaと「大型で強い勢力」になり、ゆっくり北に進んだ(図2)。東シナ海に入ると通常は勢力が弱まるものだが、台風11号は東シナ海で一時勢力を強め、「大型で非常強い」台風になった。4日頃の東シナ海の海面水温は29~30℃と高温だったので、中心気圧は945hPaに下がった(図4)
 

東シナ海の海面水温29~30℃
図4 日本近海海面水温 (2022年9月4日) 気象庁
 
 台風11号は東シナ海を北上したのち、対馬海峡から朝鮮半島南部に上陸し、日本海を北上して日本海北部で6日21時に温帯低気圧に変わった(図5)
 

台風11号、日本海を北上、南風吹き気温上昇
図5 地上天気図(2022年9月6日15時) 気象庁
 
 台風に向かって強い南風が吹き、日本海側ではフェーン現象のため気温が上昇し、金沢市では38.5℃と観測史上1位タイ記録となるなど、9月とは思えない猛烈な暑さになった。沖縄をはじめ、台風から離れた地域の高知県や三重県でも湿った空気により300mmを超える大雨が降った。また、全国的に強風が吹き荒れ、佐賀県では倒木の被害が相次いだ。山陰地方では収穫を目前にした梨が落下、熊本県では栗の実が落ちた。温帯低気圧に変わってからも強風被害は北海道にも及び、各地で30mを超える暴風が吹き荒れ、収穫前のリンゴが落下し、樹木や電柱が倒れ、建物などにも被害が発生した。
 
台風14号記録的強さで上陸
 台風14号も南海上で急発達した。17日には中心の気圧が910hPaまで下がり、大型で猛烈な台風になった(図6、7)
 

台風14号九州上陸
図6 台風14号経路図 (2022年9月14日~20日) 気象庁
           

台風14号中心気圧910hPa
図7 衛星画像 (2022年9月17日12時) 気象庁
 
 海面水温が29℃の海域を北上し、暖かい海面から多量の水蒸気を補給して、中心付近の最大瞬間風速は75mに達した。琉球大学の山田広幸教授によると、非常に強い台風の眼の付近で発生する「二重の壁雲」が台風14号で確認された(図8)。眼の中心は雲が少なく、眼の周囲は積乱雲が密集する雲の壁に囲まれている。最近の研究では、台風が強まると眼の外側にもう1つ雲の少ない空間ができて二重の壁雲が現れる。このような台風は急速に発達することが分かってきた。
 

台風14号の眼の壁雲は二重の構造
図8 雨雲レーダー(2022年9月18日10時)(気象庁の図をもとに作成)
 
 台風14号は九州に向かって北上するとともに少し勢力を弱めたが、鹿児島市付近に上陸した18日19時は935hPaと非常に強い勢力を保っていた。台風の統計のある1951年以降で、上陸時に中心気圧が最も低かったのは、第二室戸台風と呼ばれる1961年台風18号で925hPaだった。2番目に低かったのは伊勢湾台風と呼ばれる1959年台風15号で929hPa。3番目は1993年台風13号で930hPaだった。台風14号は統計史上4番目に低い台風となった。
 
 台風14号は19日朝にかけて九州を縦断し、山陰沿岸から日本海の沖合を通り、東北南部を横断し、三陸沖で温帯低気圧に変わった。九州を中心に大雨や暴風になり、台風に向かって南東風が吹きつけた宮崎県や四国では、15日の降り始めからの総雨量が500mmを超えた地点があった。宮崎県三郷町神門では985mmと1000mm近い雨が降った。最大瞬間風速は鹿児島県屋久島町で50.9m、大分県佐伯市では50.4mなど各地で観測史上1位の記録を更新した。気象庁は17日鹿児島県に暴風、波浪、高潮の特別警報を、18日宮崎県に大雨特別警報を発表した。沖縄県以外で台風の特別警報を発表したのは初めてのことだった。総務省消防局の10月12日の集計では、九州を中心に死者は5人、負傷者は158人、住家の被害は2334棟にのぼった。
 台風15号は、勢力は強くもなく、大きくもなく、上陸もしなかったが、大きな災害をもたらした(図9、10)
 

台風15号静岡県で大雨
図9 台風15号経路図(2022年9月23日~24日) 気象庁
 

台風15号東海沖に接近
図10 地上天気図(2022年9月24日3時) 気象庁
 
 9月23日室戸岬の南約300㎞にあった熱帯低気圧は、午前9時に台風15号になった。中心気圧は1000hPa、中心付近の最大風速は18m、最大瞬間風速は25mで、24日午前9時静岡県沖で温帯低気圧に変わるまで風速は変わらず、中心気圧は23日18時に1002hPa、24日午前6時に1004hPaと上昇した。静岡県内で雨が強まり始めたのは23時午後8時頃からで、午後10頃から24日午前3時頃にかけて強い雨が降った。レーダーでは静岡県に強い雨雲がかかり、線状降水帯が発生した(図11)
 

台風15号、静岡県で短時間に大雨
図11 雨雲レーダー(2022年9月24日00時30分)気象庁
 
 6時間降水量の日最大値は静岡市鍵穴で336.5mm、藤枝市高根山で335.5mm、周智郡森町三倉で315mmなど、県内7つの地点で観測史上1位の記録を更新した。また、12時間降水量の日最大値は静岡で404.5mm、静岡市鍵穴で392.5mmなど、6地点で過去最多を記録し、短時間に集中して降る激しい雨だった。静岡では半日で平年の9月1か月分の約1.5倍もの雨が降った。静岡県内での床上浸水は4091棟、住宅の全・半壊は14棟、死者は3人となった。大雨のため、矢作川水系広田川と太田川水系敷地川の堤防が決壊した。また、土砂崩れによる道路の寸断や橋の崩落などにより、616世帯が孤立した。清水区では興津川の取水口が流木で塞がれるなどして、およそ6万3000世帯で断水が発生し、長期化した。台風15号は地上天気図を見ただけでは想像できないような大雨による被害を静岡県にもたらした。
 
 今シーズンの台風は、過去にはあまりみられない現象が目立った。温暖化で大気中の水蒸気量が増加したことによって、勢力が強くなり、周辺の雨雲が発達し、様々な被害が発生する。温暖化の進行で今後も、より強く、より大きく、速度の遅い台風が現れると予想され、脅威を感じる。また、台風15号のように小さくて弱い台風でも油断してはいられない。温暖化で雨雲が予想以上に発達することが分かった。
 
10月寒暖大変動
 9月は曇雨天が多かったが、台風15号が去ってからは移動性高気圧に覆われて晴天が多くなった。秋晴れと言いたいところだが、気温が高く、夏の続きのような暑さだった。地上付近は秋の移動性高気圧型になったが、上空は太平洋高気圧が例年より強く、夏型が顔を出した。
 
 10月3日は北海道上川地方中川で25.5℃と北海道で夏日が観測され、西日本は太平洋高気圧におおわれ、福岡県前原で32.6℃、愛知県豊橋で30.8℃、愛媛県西宇和郡瀬戸で30.7℃など真夏日の地点があった。図12の上空の天気図をみると、ラニーニャ現象が続いているため、北半球の中緯度帯の高気圧が強い傾向があって、北日本中心に気温が上昇した。ところが、5日から上空に寒気が南下して、全国的に気温が急下降した(図1、13)
 

中緯度高圧帯強く、太平洋高気圧強い
図12 500hPa平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
(2022年10月3日)(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 

初冬並の強い寒気が南下
図13 500hPa平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
(2022年10月6日)(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 シベリア西部で気圧の尾根が強まり偏西風が北に蛇行し、北極寒気が日本へ南下した。太平洋高気圧もやや南へ後退し、太平洋中部ではアリューシャンの南で気圧の尾根が強まったので、偏西風が大きく蛇行し、日本には季節はずれの寒気が入ってきた。上空5000m付近の稚内上空では、6日9時には氷点下27.5℃まで下がった。北海道の高い山には雪が降り、利尻岳と大雪山黒岳は初冠雪となった。東京都心の最高気温は、4日29.5℃と夏のような暑さだったが、6日には15℃に急降下し、7日は13℃まで下がり、冷たい雨が降った。わずか3日間で9月初めから12月初めの陽気へと変わり、気温が大きく変動した。10月中旬には寒気は弱まり、偏西風の蛇行が弱まった(図14)。寒気が去ると太平洋高気圧は再び例年より強まって暖秋が戻る、というように10月は寒暖を繰り返している。
 

中緯度高圧帯強く、太平洋高気圧強い
図14 500hPa平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
(2022年10月13日)(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 偏西風の蛇行は、温暖化がなくても強まったり弱まったりして、上空の大気の流れはいつも変化している。偏西風の蛇行を強める要因は、熱帯の対流活動の影響が大きく、10月上旬はインド周辺で対流活動が活発で、インドのニューデリーでは7~9日の3日間の降水量が110mmを超え、ネパールからパキスタンでも大雨が降った(図13)。インドからパキスタン周辺で上昇した気流がアフガニスタン方面に下降して気圧の尾根を強める一因になったと考えられる。また、太平洋東部にある切り離された低気圧付近では、太平洋東部で上昇気流が強まり、下降した気流はアリューシャンの南の気圧の尾根を強める働きをし、偏西風の蛇行をさらに大きくしたと考えられる。インドの活発な対流活動はラニーニャ現象の影響がある。また、太平洋中部では太平洋高気圧が強く、例年より北上している。強い太平洋高気圧がアリューシャン付近の気圧の尾根を強める一因になった。日本付近でも太平洋高気圧は例年より強いため、寒暖差を大きくしている。太平洋高気圧の強まりや北上は温暖化の影響と思われる。
 
ラニーニャ現象続き、寒冬か
 昨秋始まったラニーニャ現象は、気象庁の予報では今冬いっぱいは続く予想だ。一昨年の秋もラニーニャ現象が発生したので、3回続けてラニーニャ現象の秋となった。今冬まで続けば連続3回のラニーニャの冬となり、秋も冬も1949年の統計開始以降では初めてのことになる。ラニーニャ現象の冬は寒くなる傾向がある。
 
 今冬の気象庁の長期予報では、北日本と沖縄・奄美は平年並で、東・西日本では平年並か寒いと予想されている。予想天気図ではアリューシャンの南では高気圧が強まり、大陸の高気圧も強い傾向で、図13と似ている。今冬は偏西風が大きく蛇行し、東・西日本中心に寒気が南下しやすいようだ。低温と乾燥した空気は新型コロナウィルスの感染拡大につながり、第8波が気になる。11月から警戒した方がよさそうだ。

 
 
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