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トマト抑制栽培における夏期育苗時の環境改善による本圃での収量性向上  2010-12-22

●京都府農林水産技術センター 農林センター 園芸部 礒野浩太  

 
背景と概要(要約)
 京都府内の施設トマトは、養液栽培を中心に周年的に栽培されている。
 現地での問題点としては、夏期高温時(8月上中旬)に定植する作型において、育苗時の高温期に苗質が低下し、その結果、本圃における収穫開始時期が遅れ、初期収量が低い傾向にあった。
 
 そこで、当センターでは4cm角の小型ロックウールブロックを用いた省スペース型低コスト育苗(300~400本/m2育苗が可能)において、高濃度培養液給液(園試処方でEC9.6dS/mに調製)と環境改善技術(細霧冷房と培養液冷却(20℃設定))を組み合わせた盛夏期の育苗技術を開発した。この技術の導入により、収穫開始時期、初期上果収量(3段花房までの上果収量)、作期を通した総上果収量が多くなることがわかった。
症状
 トマト抑制栽培において、夏期育苗時の高温により苗が徒長し、苗質の低下が見られ、本圃定植後に収穫開始時期の遅れ、初期収量の低下がみられる。
原因
 8月上中旬に定植を行う場合、育苗期が夏期高温時となり、育苗期間中の晴天日には苗付近の気温が39℃以上となるため、苗質が低下し、花芽の生育が遅れることが原因である。
対策
 高濃度培養液給液による収穫開始時期の遅れの問題を解決するために、環境改善技術として細霧冷房(写真1、2)や培養液冷却(写真3、4)による気温及び根圏温度の上昇を抑制し、苗の充実を図った。
 
細霧冷房用ファン 細霧冷房用コンプレッサー
左 :写真1 細霧冷房用ファン / 右 :写真2 細霧冷房用コンプレッサー
 
冷却培養液製造装置 写真4
左 :写真3 冷却培養液製造装置 / 右 :写真4 冷却水により二次冷却された培養液
 
 なお、培養液冷却処理は、安価な業務用の冷水製造器(500W程度)で作成した冷却水をホースに流して培養液タンク内を通し、タンク内の培養液が常に20℃程度を保つように温度センサーで管理した。   
具体的データ
 育苗期間中の晴天日(2009年8月5日)に各環境改善処理(細霧冷房、培養液冷却)を施した処理区における、植物体付近の気温を測定した結果、無処理区では最高気温が39℃以上となったが、細霧冷房処理により最大5.6℃、平均1.1℃低下した。また、培養液冷却処理により気温は最大5.0℃、平均1.3℃低下した(図1)
 
植物体付近(育苗床上5cm)の気温の推移
図1 植物体付近(育苗床上5cm)の気温の推移 (2009/8/5 0:00~24:00)
 
 定植時の苗質については、高濃度培養液で育苗した苗に、環境改善処理(細霧冷房、培養液冷却)を施すと、徒長が抑えられて充実した草姿であった(図2のa、b、c、dの苗)。また、高濃度培養液による無処理区(図2のe)では徒長は抑えられているが、主茎が細く衰弱した草姿となり、慣行培養液による無処理区(図2のf、gの苗)では徒長した苗姿となった(図2)
 
各処理区の定植時の苗の姿
図2 各処理区の定植時の苗の姿
 
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 細霧冷房や培養液冷却の環境改善処理により、気温及び根圏温度の昇温抑制効果(図1)が認められ、定植後の収穫開始時期は、無処理(高濃度培養液給液のみ)に比べて前進することがわかった。また、初期の上果収量、作期を通した総上果収量が、無処理に比べて増加することがわかった。なお、作期を通じた上果率は、環境改善処理による向上効果はみられなかった(表1、2)
 
表1 苗処理が初期上果収量(1、2段果房)に及ぼす影響
苗処理が初期上果収量(1、2段果房)に及ぼす影響
 
表2 苗処理が作期を通した収量(1~6段果房)に及ぼす影響
苗処理が作期を通した収量(1~6段果房)に及ぼす影響
参考資料
平成21年度農業電化協会京都地区研究報告
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