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ミナミトゲヘリカメムシによる被害と防除対策  2012-01-26

●福岡県農業総合試験場 病害虫部 清水信孝  

 
背景と概要(要約)
 ミナミトゲヘリカメムシ(図1)は元来南方系のカメムシで、沖縄県ではシークワーサーを加害する害虫として知られている。日本本土での害虫としての記録はほとんどなかったが、福岡県では平成12年に温州ミカンで本種による被害が確認され、その後、カキやスモモでも本種の加害が認められるようになった。佐賀県や三重県でもカンキツでの被害が報告されており、温暖化に伴って、本種の分布域が拡大(北進)していることによるものと考えられる。
 
ミナミトゲヘリカメムシ
図1 ミナミトゲヘリカメムシ
症状
 カンキツへの加害は、4~6月と秋季で確認されている。果実外観の被害は不明瞭であるが、着色が促進されて落果する(図2、図3)。加害部を剥皮すると、果肉は白く変色してスポンジ状になっている。
 
温州ミカンへの寄生
図2 温州ミカンへの寄生
 
加害による温州ミカンの落果
図3 加害による温州ミカンの落果
 
 カキの加害時期は6月で、幼果の加害部が半透明になり、後に大きく凹んでその部位が黒褐色となり(図4)、落果する。加害部を剥皮すると、果肉は褐変しているがスポンジ状ではなく、チャバネアオカメムシやツヤアオカメムシ、クサギカメムシの加害とは明らかに異なる。秋季の加害は、今のところ確認されていない。
 
カキ幼果の加害状況
図4 カキ幼果の加害状況
 
 カンキツ、カキのいずれも被害は山間部の雑木林周辺の園で認められ、発生は局所的で2、3本の樹が集中的に加害される。
原因
 ミナミトゲヘリカメムシはクスノキ、シロダモ、アオモジなどのクスノキ科植物を主な寄主とし、これらを季節的に移動しながら生息していると考えられる。平成20年と21年に福岡県内で行った調査では、シロダモ樹上で5~9月に、アオモジ樹上で7~10月に、クスノキ樹上で10~11月に、コブシ(モクレン科)樹上で9~10月に本種の生息が確認された。本種はこれらの実を餌として増殖し、これら植物の餌条件が悪化することに伴って、その一部が果樹園内に飛来して、果実を加害するものもと思われる。
対策
 本種は局所的に発生することから、クスノキなど寄主植物の近くの樹を中心に園内を見回り、発生を早期に確認することが重要である。
 果樹カメムシ類に活性を示す合成ピレスロイド系殺虫剤、ネオニコチノイド系殺虫剤、有機リン系殺虫剤は、ミナミトゲヘリカメムシに対しても同様の効果を示すと考えられる(図5)ことから、発生が認められた場合は、それぞれの品目で果樹カメムシ類に登録のある薬剤を散布する。
 
ミナミトゲヘリカメムシに対する各種薬剤の防除効果
図5 ミナミトゲヘリカメムシに対する各種薬剤の防除効果

1)薬剤散布した果実にミナミトゲヘリカメムシ成虫を3日間接種させた
2)Mr.ジョーカー:Mr.ジョーカー水和剤2000倍
    スタークル:スタークル顆粒水溶剤2000倍
    スミチオン:スミチオン乳剤1000倍
3)補正死虫率は無処理の死虫率を0として補正した死虫率
4)スミチオンの3日後の補正死虫率は0%

参考資料
福岡県病害虫防除所 平成14年度発生予察特殊報第2号
口木文孝ら 第54回日本応用動物昆虫学会大会(講要)
三重県病害虫防除所 平成17年度発生予察特殊報第4号

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