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滋賀県における白未熟粒発生抑制を目指した穂肥施用技術  2012-02-08

●滋賀県農業技術振興センター 環境研究部 環境保全担当 堀田 悟  

 
背景と概要(要約)
 近年、西日本を中心として、白未熟粒の発生による1等米比率の低下が問題となっている。これは、温暖化の影響により水稲初中期の生育が旺盛となり、籾数が過多となって生育後期には栄養凋落傾向となることと、登熟期間に籾へのデンプン蓄積が不良となることが要因とみられている。一方、食味への影響が大きい玄米タンパク質含有率の低減のため、穂肥の減肥が慣行的に行われていることも、栄養凋落を助長していると考えられる。
 
 そこで、滋賀県の主要早生品種である「コシヒカリ」について、登熟期間が高温であっても、収量を一定確保しつつ玄米の外観品質の低下を抑える穂肥施用技術について検討した。
 
 この結果、「コシヒカリ」の穂肥は、総窒素施用量を4kgN/10aとし、1回目(幼穂形成期7日後)に2kgN/10a、2回目(幼穂形成期14日後)に2kgN/10a施用する分施体系(以下2-2kgN/10a)が、白未熟粒発生抑制に有効と考えられた。
具体的データ
(1)重窒素を用いた穂肥窒素動態解析
 穂肥窒素の水稲各部位への移行は、施用時期が早いほど、登熟初中期に光合成の盛んな上位3葉身への転流率が高かった。一方、施用時期が遅いほど、登熟初期には稈や葉鞘などの部位の蓄積が多く、登熟中後期にかけて籾への移行が多くなり、玄米タンパク質含有率が高まった。また、収量は大きく低下した。
 このため、出穂期に近い窒素施肥は、収量および食味を低下させる懸念があることから、穂肥は幼穂形成期14日後までに施用することが望ましいと考えられた(図1)
 
図1
(クリックすると拡大します)
 
(2)穂肥分施配分の検討
 穂肥の総窒素施用量3㎏N/10aでは、気象(2008年:登熟期が高温、2009年:登熟期が低温)や作土土性(砂壌土および埴壌土)が異なる条件においても、精玄米重は 2-1kgN/10aで多く、整粒歩合は1回目の施用量を減らし、2回目を多くするにつれて高まった(図2)
 
図2
(クリックすると拡大します)
 
 また、1回目の施用量を減らし、2回目を多くしても、玄米タンパク質含有率に差は認められなかった(表1)
 
表1
(クリックすると拡大します)
 
 しかし、総窒素施用量3kgN/10aでは、収量を低下させずに玄米品質を高めることは難しいと考えられた。
 
(3)穂肥施用量の検討
 穂肥の窒素施用量は、気象(2009年:登熟期が低温、2010年:登熟期が高温)や作土土性(砂壌土および埴壌土)が異なる条件でも、2-1kgN/10aよりも2-2kgN/10aで精玄米重が向上し整粒歩合が同等以上確保できた(図3)
 
図3
(クリックすると拡大します)
 
 また、穂肥の総窒素施用量を3㎏N/10aから4kgN/10aに増やすことで、砂壌土ほ場では玄米タンパク質含有率が高まる傾向が認められたが、食味を低下させる基準の7.0%を大きく下回ったことから、食味への影響は少ないと考えられた(表2)



表2
成果の活用面・留意点
(1)有機物施用や深耕等の土づくり、基肥および追肥の減量、細植、適正な栽植密度、水管理等の対策技術と適期収穫を併せて実践すること。
(2)穂肥の総窒素施用量を4kgN/10aとすることで、3kgN/10aに比べ玄米タンパク含量がやや高まることに留意する。
(3)穂肥は分施体系2-2kgN/10aを基本とするが、幼穂形成期までの水稲の生育状況に応じた分施方法については、現在調査中である。
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