夜間冷房によるバラの品質向上 | 2010-04-28 |
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●静岡県農林技術研究所 佐藤展之 |
背景と概要 | バラの生育適温は、日中が28℃程度、夜間が20℃程度であり、温室またはハウスで周年栽培されている。夜間温度が25℃以上となる静岡県のような暖地の夏季では、生育が不良となる。近年の温暖化による温度の上昇で、夏季の高温はバラの品質低下に大きく影響している。 |
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症状 | 夜温が25℃以上、日中気温が35℃以上になると、生育が不良となる。バラ栽培では、切花重、茎径、花らい(花の大きさ)などが小さくなり、収量も減少する。 |
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原因 | 日中の高温によりバラの乾物生産が抑制されるとともに、夜間の高温により呼吸消耗が多くなるために、生育が不良となると考えられる。 |
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対策 | (1)日中の遮光 夏季の晴天日に、日中の遮光により、温度を低下させることができる。 (2)細霧冷房による日中の気温低下 温室内に細霧冷房装置を設置し、フェンロー型ガラス温室で温度低下効果の検討を行った結果、日中の気温を最大2℃程度低下させることができた(表1)。   表1 細霧冷房による温室内温度低下効果
(3)パットアンドファンによる日中温度の低下 温室にパッドアンドファン装置を設置することで、夏季日中の温室内気温を5℃以上低下することができた。晴天日には、外気温よりも低くすることができ、曇天日でやや湿度が高くても外気温と同等の気温まで低下することができた。   パットアンドファンでは、パットからの位置による温度差が有り、パットに近い位置では温度低下効果が高いが、パットから離れたファン側になると最高で4℃程度の温度差が生じることもあり、温室内の温度むらが起こる場合もある。   表2 パットアンドファンによる温室内環境の変化 (あたらしい農業技術(静岡県農林水産部 本間義之)より) パットアンドファンの利用により、温室内の日中温度を5℃以上低下させることができる。
(4)ヒートポンプによる夜間冷房 バラ栽培における暖房コスト削減のため、ヒートポンプを導入し、石油燃焼式暖房機と併せて使用する、ハイブリッド方式の暖房が普及しつつある。ヒートポンプは、暖房だけでなく、温室の夜間冷房装置としても使用することができる。ヒートポンプの駆動のために用いる電気料金は、年間一定の基本料金がかかる。ヒートポンプを冬季の暖房のためのみに使用するのではなく、夏季に夜間冷房を行うことでヒートポンプを有効利用することができる。   ヒートポンプを用いた夜間冷房で、バラを栽培すると8月の夜間の気温は、対照区と比較して約3。5℃低下した。 夏季の夜間冷房により、夜冷区は対照区と比較して、8月の切花長・花らい長が統計的に有意に長くなり、8月には切花総重量も、有意な差で大きくなった。切花長の長さを基準とした、夜冷区と対照区の、月別階級別切花収量は、7~9月の高温期に、短い切花長の階級発生率が高くなった。
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参考資料 | ・昭和61年度静岡県農業試験場試験成績概要集(勝野留雄) ・あたらしい農業技術No335、パットアンドファンによる温室の冷房(平成11年度 静岡県農林水産部 本間義之) ・空気熱源式ヒートポンプを用いた夏季夜間冷房がバラの収量品質に及ぼす影響、佐藤展之1、守谷栄樹2、 安井清登3、 佐藤仁宣3、野々下知泰4(1静岡農林研、2中部電力㈱、 3三菱重工空調システム㈱、4ネポン㈱)(2009、3) 園芸学研究 8(別1)
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