| 高温条件下でも着色が良く、食味の良いリンゴ極早生品種「恋空」 | 2012-12-13 |
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●（地独）青森県産業技術センターりんご研究所 後藤聡
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 背景と概要 | 近年、青森県においても、夏～秋にかけて記録的な高温に見舞われ、リンゴでは早生・中生種を中心に着色不良等の高温障害が頻発している。そのため、長期的な対策として、温暖化に対応した品種の育成が求められている。
りんご研究所が育成したリンゴ「あおり16」（商標名：恋空）は、青森県で8月中下旬に収穫でき、着色が良く、食味の良い極早生品種である。
暖地産と青森県産の「恋空」の果実品質を比較したところ、高温条件下でも着色が良く、果実品質、貯蔵性等とも良好であることが確認された。県内限定であった普及条件も昨年解除されたことから、暖地の生産者の方々にも「恋空」を生産していただき、各県における温暖化対策に役立てていただければ幸いである。
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| 育成経過 | 「あおり16」は、1984年に当研究所育成系統「67―45」（あかね×（東光×リチャードデリシャス））に「夏緑」を交配し、育成した品種である。商標登録名は「恋空」で、2011年からは県外への苗木販売が解禁されている。
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| 品種特性 | １．果実特性
「恋空」の収穫時期は、青森県では8月中下旬で、「未希ライフ」や「シナノレッド」に比べ、2週間ほど早く収穫できる。果実の大きさは250ｇ程度、果形は扁円形で、玉揃いは比較的良好である（図1）。果皮の色は濃紅色で、縞はない。
図1「恋空」の果実
果肉硬度は16ポンド程度で、糖度が13％（Brix）程度、酸度は100ml当たり0.35g程度である（表1）。食味は、果汁が多く、これまでの極早生品種に比べると甘味が強く、上品な風味を持っている。肉質は緻密で、蜜は入らず、サビや心カビの発生もほとんど見られない。貯蔵性は普通冷蔵で2週間程度である。
２．栽培特性
早期結実性で、花芽の着生が良く、腋芽花の着生も多めである。また、短果枝の着生が多く、枝の伸びはスパータイプに似ている。
青森県における満開日は5月12日で「ふじ」よりも1日程度早い（表2）。「恋空」の交雑和合性は、S遺伝子がS9 S28で、主力品種の「ふじ」、「つがる」、「王林」、「ジョナゴールド」とは和合性だが、「デリシャス系」とは不和合性である。
極早生品種としては、熟期の揃いが良く、2回程度のすぐりもぎで収穫することができる。また、収穫前落果はほとんどみられない。
耐病性の程度は、黒星病に対しては他の一般品種と同様にり病性だが、斑点落葉病に対しては「つがる」並みに強い抵抗性を示す。その他の病害虫に対しては一般防除で問題ない。より詳しい栽培方法等については、参考資料を参照して下さい。
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| 暖地産と青森県産の果実品質の比較 | 2010年に、富山県農林水産総合技術センター園芸研究所果樹研究センターにご協力いただき、同研究所とりんご研究所で栽培した「恋空」の果実品質を比較した。
収穫前30日間における富山県と青森県の気温の状況は、富山県の方が平均気温で1.1℃高く、この間に最低気温が20℃を下回った日数は、青森県では７日間であったのに対し、富山県では4日間であった（表3）。
（クリックすると拡大します）
果皮のアントシアニン含量を調べたところ、富山県産では、青森県産の半分ほどに低下していたが、元々「恋空」はアントシアニンを多量に含むことから、富山県産の果実でも十分な着色を確保することができた（図2）。
 
図2 青森県産（左）及び富山県産（右）の「恋空」
また、収穫時及び貯蔵後の果実品質についても比較したところ、いずれも青森県産と同等であり、品質は良好であった（表4）。
（クリックすると拡大します）
さらに、富山県では、収穫時期が青森県よりも10日ほど早まり、お盆に収穫が可能であったことから、今後温暖化が進行した場合には、寒冷地においても安定してお盆前に収穫できることが期待される（表3）。 |
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| 参考資料 | | 果実日本（2012）. 第67巻第1号：10-12 |
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