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記録的暖春(あぜみち気象散歩68)   2018-06-26

●気候問題研究所 副所長 清水輝和子  

 
東日本は記録的高温
 この春の気温は全国的にかなり高かった。東日本では3~5月の平均気温が平年より2.0℃も高く、春としては統計を開始した1946年以降で最も高くなった(図1)
 

図1 地域平均気温平年偏差時系列 (2018年3月~5月)

 
 高温と好天で農作物の生育は順調に進んだ。農水省発表の食品価格動向調査によると、3月5日の週はキャベツ、レタス、だいこんは平年(過去5年平均)に比べて1.5~2.5倍も高かったが、5月28日の週には平年よりキャベツは34%、レタス5%、だいこんは3%安くなった。小玉スイカも春の高温で生育が早まり、東京大田市場では5月18~24日の卸値が前年同期比で1割安く、1日当たりの平均入荷量は3割多かったという。
 
降水量多いが日照時間も多い
 春の天候は2014年から高温少雨傾向が続いていたが、今春は沖縄を除いて雨が多かった(図2)。東・西日本の特徴は多雨の割には日照時間が多かった。これは、1回の雨の量が多く強い雨や大雨が降ったことを示している。
 

図2 気温、降水量、日照時間 分布図(2018年3~5月) 気象庁
 
 上空5000m付近の天気図(図3)では、春の期間(3~5月)は日本を含む中緯度帯は北半球規模で気温が高く、高気圧が東西にのびて帯状に強かった。日本付近に大規模な寒気の南下こそなかったが、バイカル湖の北西の低気圧から寒気がちぎれて、寒冷渦と呼ばれる小さな塊となって日本付近に南下した。暖気が強いので寒気とぶつかり雨雲が発達しやすく、大雨が降ることがあった。
 

中緯度高圧帯強い
図3 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2018年3~5月(平年値は1981年~2010年の平均値)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 とくに5月は寒冷渦の通過が多く、局地的な大雨や降ヒョウが目立った。5月9日には寒冷渦の通過で関東北部の山沿いでは季節外れの雪が降るなど冷え込み、気温が大きく変動し、体調の管理にも気を遣う春だった。
 
秋田で記録的大雨
 5月18日から19日にかけては、昨年7月に豪雨災害のあった秋田県を中心に記録的な大雨が降った(図4)。秋田県の阿仁合では18日の日降水量が200mmに達するなど、数か所で観測史上最も多い記録を更新した。降水量の歴代1位の記録は、通常は台風や梅雨末期の豪雨で更新されることが多い。まだ5月だというのに、東北地方で大雨の記録が出るとは驚きだった。昨夏の豪雨で氾濫した雄物川が再び氾濫し、住宅の550棟以上が床上・床下浸水し、仙北市を中心に水田や枝豆の農地など約6000haが冠水・浸水した。
 

秋田県で記録的大雨
図4 レーダー(5月18日17時55分)気象庁
 
 18日の地上の天気図(図5)を見ると、発達した低気圧が秋田沖にあって、前線が日本海沿岸にのびている。太平洋の東海上には例年より強い高気圧があって、西に張り出している。この高気圧の西から低気圧に向かって湿った南西風が入り、秋田に大雨をもたらした。この天気図型は梅雨末期にみられる集中豪雨型と同じタイプだ。そのうえ、上空には東北地方を中心に寒冷渦が通過したため、暖かな湿った気流が上昇しやすくなって雨雲が発達し、秋田周辺に大雨を降らせた(図6)
 

低気圧に向かって暖湿流入る
図5 地上天気図(2018年5月18日18時)(気象庁の図を基に作成)
 

寒冷渦が東北地方を通過
図6 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2018年5月19日(平年値は1981年~2010年の平均値)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 近年の集中豪雨では、温暖化などによって高水温になった海上から多量の水蒸気が運ばれ、豪雨の一因となることが多いが、今年5月の日本海の海面水温は平年より低かった。とはいえ、5月の記録的大雨の隠れた背景には、温暖化の影響があると思われる。地球の気温が上昇すると大気中に含まれる水蒸気が増加する。18日は集中豪雨型が現れて、水蒸気が東北地方に集まり、大雨の一因になったと考えられる。
 皮肉なことに、被害にあった大仙市協和峰吉川地区では、堤防の整備改修を行う着工式を予定していた19日に川が氾濫した。温暖化で春の大雨のリスクは北日本にも広がっている。改修工事が急がれる。
 
梅雨らしい6月
 この春以降は季節の歩みが例年より早い傾向で、入梅も全国的に早めだった。九州と四国では平年より5~8日も早く、5月26~28日に梅雨に入った。台風の接近も早かった。各地で入梅して間もなくフィリピンの東に発生した台風5号は、10~11日に本州の南海上を北東進し八丈島や大島など伊豆諸島に大雨を降らせた。また、15日には台湾南西部で台風6号が発生した。16日には沖縄を通過し500mmを超える記録的大雨や強風をもたらし、九州の南海上で温帯低気圧となった。沖縄では春の降水量がかなり少なく、5月8日頃に入梅しても梅雨らしい雨は降らず水不足が心配されたが、台風6号の通過により水源地のダムの貯水率は回復した。
 
 台風6号が発生した頃には、オホーツク海に高気圧が現れ、北・東日本の太平洋側ではヤマセ(北東風)が吹いて梅雨寒となった。図7のように、太平洋岸には梅雨前線が停滞し、典型的な梅雨型の気圧配置になり、空梅雨だった昨年の6月とは違い、梅雨らしい天候になった。オホーツク海高気圧は停滞せずに、千島の東へ移動して梅雨寒は次第に解消した。
 

オホーツク海高気圧現れ梅雨型、ヤマセ吹く
図7 地上天気図(気象庁の図を基に作成)
   2018年6月16日06時

 
 6月下旬に入って梅雨前線は西日本で活動が活発になり、21日鹿児島県平島で24時間降水量が319mmに達し、宮崎県えびのでは72時間降水量が500mmを超えた。予想では、下旬後半は梅雨前線が日本海から北日本に北上し、北日本では大雨の恐れがある。
 また、東海上では太平洋高気圧が強まり、東・西日本の太平洋側では早くも梅雨明けのような気圧配置が予想されている。夏の到来も早まりそうな気配だ。急な気温上昇で熱中症には警戒が必要だ。
 

 
 
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