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| ヨコヅナサシガメ―白黒好みの渋いドラキュラ (むしたちの日曜日1) | 2009-12-10 |
| ●プチ生物研究家、ときどき児童文学者 谷本雄治 | 派手とか地味の違いはあっても、ほとんどの生き物は多彩な色から成り立っている。白と黒が目立つ有名どころはパンダやペンギン、シャチあたりだろうか。身のまわりを見ても、白と黒が目立つのは葬儀の時に張る鯨幕ぐらいである。   昆虫の世界でも、モノクロ種はきわめて少ない。ところが最近は白と黒のコントラストを売り物にする、ある昆虫がやたらと目につくようになってきた。ひとによっては「おなかの白と黒のストライプがなんともいえず美しい!」と絶賛する、ヨコヅナサシガメである。   そう。臭い虫の代表として知られるカメムシの一種だ。 一般に認識されるカメムシの多くは、茶色系か緑系に大別される。中国の一部地域ではカメムシを食べると聞き、まさに本場仕込みの方法で調理されたものを食べさせてもらったことがある。臭みを抜くため、水に一晩つけておいたものだ。それを油でさっと炒めると、意外にも香ばしく、味も悪くない。左党なら喜びそうな仕上がりだった。 それはともかく、その際教わったのが、緑系のカメムシは食べない方がいいということだった。   では、白&黒をアピールするヨコヅナサシガメのお味はいかがなものか。残念ながら、まだ確かめてはいない。 植物の汁を吸うカメムシ類は主に、吸汁害虫として農家に嫌われている。水稲では斑点米をもたらす「斑点米カメムシ」、果樹では果実の商品価値をなくす「果樹カメムシ」というグループ名まで持つ。   ところが、そうした植物依存型ではなく、ドラキュラ型のカメムシも存在する。その代表がサシガメの仲間で、頑丈なくちで相手を刺し、その体液を吸い取って生きている。 サシガメを名乗る以上、ヨコヅナサシガメも例にもれない。サクラ、ケヤキの大木などに出没し、葉っぱを食い荒らす毛虫を餌食にする。 「へえ、なかなかいい奴じゃん」 そういう見方もある。蛾の幼虫である毛虫や芋虫は、樹木にとって敵であるからだ。 ここで問題になるのが、日本では異例の白黒ストライプである。 何を隠そう、ヨコヅナサシガメは外国から侵入した外来種なのだ。昭和の初めに上陸したそうだから、人間でいえばひと世代前の話だが、生き物の世界ではまだ新参者である。 それでも1990年代には関東地方でも見かけるようになり、千葉市のわが家のすぐそばにある通称「どんぐり公園」のサクラの木でも集団で生活している。それで数年前には、福島県に住む昆虫研究者のために捕獲し、宅配便で送ったものである。身近で手に入らないからと、感謝されたものだ。   ところがそれからしばらくして、連絡が入った。「こちらでも捕まえることができました!」 あわわ、オソロシヤ。地球温暖化による影響は、白黒ドラキュラにもあらわれていたのだ。 日本列島の温度が上がれば彼らはさらに北上し、勢力分布を広げるだろう。そうなると、もとから生息していた毛虫や芋虫の運命はどうなるのか。   「そいつらはどうせ、嫌われものだろ。ムシして、いいんじゃない?」   じつは、ここが難しい。たとえ害虫と呼ばれようと、どんな生き物にも生態系に組み込まれた役割があるからだ。 いままでいなかった虫がどんどん増えていくと、予期せぬことが起きるやもしれぬ。 だが、温暖化の申し子はそんなこと、気にしない。 「はてさて、まだまだ寒い日本の冬をどうやって乗り切ったものか……」 いまごろは、そのことだけに知恵を絞っているハズである。(了)     写真 上から順番に ・白と黒のコントラストがはっきり出ているヨコヅナサシガメの成虫 ・ゴキブリを襲うヨコヅナサシガメの幼虫 ・まだ赤い部分を残すヨコヅナサシガメの幼虫 |
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長く農業記者をつとめ、いまはプチ生物研究科として活躍する著者が、自らの小さな家庭菜園で次々と伸びてくる雑草対策として、代表的な13の方法を順次検討する、思索と苦悩の日々を綴っている。13の方... |
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