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温暖化が農業に与える影響
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地球温暖化の科学的な根拠 -観測と研究の歴史-【3】  2014-06-02

●NPO法人シティ・ウォッチ・スクエア理事長 林 陽生  

 
(2)船舶観測データの利用
 16世紀末に、ガリレオが温度計を発明した。最初に気象観測のネットワークができたのは17世紀中頃と言われ、19世紀の終わりまでに人が住んでいるあらゆる陸上で気象観測が行われるようになった。地球表面の70%を占める海上については、1850年代に船舶による気象観測の国際的な取り決めが行われたが、当初は陸上の観測と比べて信頼性が低かった。船舶観測が始まったころの状況を簡単に見てみよう。
 
 Follandら(1984)によると次の通りである。
(i) 初期の海面水温は布製のバケツなどで海水を採取して測定したが、その後、船体内に海水を導入する方法に変わった。すると海水を引き込む過程でエンジンの発熱が影響する。従って、後者は前者より約0.3~0.7℃温度が高くなった。 (ii)海洋上の気温は船舶の速度で変化した。一定の通風条件で測定する決まりがなかった。(iii)風を受けた帆の風下で気温を測定した場合、帆が空気を温めるために気温は高めになった。さらに、(iv)温度計自体が太陽光や甲板からの反射を遮蔽していないため、気温は高めになった。そもそも、測定方法が記述された観測記録ばかりではなかったのである。時代的にも船舶によっても、状況はまちまちだった。
 このように、海面水温や海上の気温は重要な役割があるが、船舶観測では陸上と比較して信頼度が低かったので、研究の流れのなかでは、後者を利用して前者を補正する手法が用いられることになる。その後、海上の観測はブイによるものが主流になり、格段と測定精度が増した。最近はエル・ニーニョの観測のためもあり観測点数が増加している。
 
 ところで、地球規模の気温がどのような形(曲線)で上昇しているか? と、なぜ気温が上昇するか? は、期待される回答の意味合いが全く異なるが、両者とも興味深い。近代科学史(地球温暖化に関連する)においては、必然として後者が先に議論された。
 
 人間活動による大気中の温室効果ガス濃度の上昇が温暖化の要因であることは、Arrhenius (1896)やCallendar (1938)が論じた。アレニウスは、ノーベル賞の創設にも関わったスウェーデンの大物物理化学者であった(写真)。彼は、晩年に二酸化炭素の温室効果への寄与を初めて定量的に明らかにし、この寄与が長期の気候に影響することを示唆した。ただし、現在において化石燃料燃焼が大気中の二酸化炭素濃度上昇の主因であることはよく知られているが、この論文では、そうした因果関係については議論されなかった。この研究の約40年後、カレンダーは、半世紀を通し燃料燃焼で大気中の二酸化炭素量が15百億t増加し、これが年0.003℃の割合で気温上昇を引き起こしたことを演繹的に明らかにした。同時に世界中の200地点の観測値を使い、実際に年0.005℃の割合で温暖化したことを示し、気温上昇の大部分が温室効果によるものとした。
 
参考資料
Arrhenius, S.: On the influence of carbonic acid in the air upon the temperature of the groud. P.M. and J.S., Ser.5, 41, 237-276, 1898
Callendar, G.S.: The artifical production of carbon dioxide and its influence on temperature. Q.J.R.M.S., 64, 223-240, 1938
Folland, C.K. D.E. Parker and F.E. Kates: Worldwide marine temperature-fluctuations 1856-1981. Nature, 310, 670-673, 1984
アレニウスの肖像の引用先 wikipedia


 
 
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