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ラニーニャ現象による寒波と米国の竜巻発生(あぜみち気象散歩89)   2021-12-24

●気候問題研究所 副所長 清水輝和子  

 
北暖西冷型、のち師走寒波
 11月は西日本から沖縄・奄美方面に寒気が南下しやすく、北日本では暖気が入り「北暖西冷型」の気温分布だった(図1)。東日本は西日本ほどの冷え込みはなかったが、周期的に寒気が入り、12月初めまで北暖西冷型が続いた。12月上旬後半からは全国的に気温が上昇し、暖かくなった。札幌では雪が降っても溶けたため、遅い根雪の記録だった昨年の12月14日を過ぎても積雪は0㎝だった。ところが、17日に突然の寒波が来て、50㎝もの大雪となった。小樽では24時間降雪量の日最大値が52㎝となり、観測史上1位を記録した。
 

11月~12月初め北暖西冷型、12月上旬後半から暖冬、中旬後半から寒波
図1 地域平均気温平年偏差5日移動平均時系列(2021年10月~12月)(気象庁)
 
 この秋からラニーニャ現象が発生した。ラニーニャ現象は日本に寒波をもたらすことが多い。米国ではラニーニャ現象の影響もあって、季節外れの竜巻が発生した。日本では1月にかけて断続的に寒波がやってきそうだ。
 
寒冷渦で大荒れの11月
 11月の上空の天気図(図2)を見ると、日本の北のオホーツク海からシベリア東部にかけて、高気圧が居座った。北日本はこの高気圧から暖気が入ることが多く、北海道では釧路や根室で記録的高温となった。偏西風の流れは高気圧にブロックされて中国大陸で蛇行し、寒気は東シナ海、南西諸島、西日本に入った。気温分布は北日本が暖かく、西日本や沖縄・奄美が冷える「北暖西冷型」になった。
 

北海道の北にブロッキング高気圧、寒気南下
図2 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
2021年11月(平年値は1991年~2020年の平均値)
(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 日ごとの上空の天気図(図3、4)を見ると、日本の北に高気圧、東には気圧の尾根があって強まることが多かったので、西シベリアから南下する北極寒気は、ちぎれては塊となってたびたび日本付近を通過した。「寒冷渦」と呼ばれる寒気の塊は、暖気とぶつかると、地上付近では活発な寒冷前線となって通ったので、全国的に大荒れの天候となった(図5)
 

寒冷渦通過で大荒れ
図3 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
2021年11月9日(平年値は1991年~2020年の平均値)
(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 

再び、寒冷渦通過で大荒れ
図4 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
2021年11月23日(平年値は1991年~2020年の平均値)
(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 

寒冷渦による寒冷前線の通過で大荒れ
図5 地上天気図(2021年11月25日15時) 気象庁
 
暖かな師走と米国の大竜巻
 12月上旬前半までは西日本に寒気が南下しやすい状態が続いたが、上旬後半から全国的に暖気に覆われ、暖かな師走となった(図1)図6の北半球の天気図を見ると、日本の北からアリューシャンの南にかけて高気圧が強まり、日本付近は暖かな空気に覆われた。
 

日本は暖かな師走、米国で竜巻多発
図6 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
2021年12月10日(平年値は1991年~2020年の平均値)(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 12月は、このアリューシャンの南の強い高気圧が北米大陸の天候にも影響を与えた。北米では西部に寒気が南下し、東部では高気圧が強まったので、偏西風は太平洋から大きく蛇行した。米国では寒気と暖気が激しくぶつかり合い、中西部と南部で多数の竜巻が発生した。10日夜から11日未明にかけて12時間以上にわたり、9つの州で発生が相次ぎ、米海洋大気庁によると、9つの州で70件の竜巻情報が報告された。そのうちの1つは、300㎞以上にわたり竜巻を持続させて4つの州を通過した。これほど長い移動距離は年間を通してもあまり例がなく、バイデン大統領は「史上最大級の竜巻発生」と危機感を強めたと報じられた。
 
 米国では竜巻は、例年4月から5月にかけて多く発生する。12月にこれほど多く強い竜巻が発生するのは異例なことで、その原因としては、米中南部では10日の最高気温が各地で記録的に高くなるなど、発生の前の数日間は中南部の気温が平年を大きく上回ったことがあげられている。また、メキシコ湾の海面水温は平年より高く、南海上から暖かく湿った空気が流れ込み、強い積乱雲を発達させる要因になった。
 
 ラニーニャ現象の影響も見逃せない。赤道付近の太平洋では、海面水温が東部から中部にかけて平年より低く、西部で高くなるラニーニャ現象が今秋から発生している。昨年も秋に発生してこの春に終息したが、秋には再発生し、2年連続してラニーニャの冬を迎えた。同じラニーニャ現象でも昨年と今年では違う点がある。それは、北米沿岸の海水温で、昨冬は高かったが今冬は低くなっている(図7、8)。これは「北太平洋十年規模振動(PDO)」と呼ばれ、北太平洋の中部も同時に低くなったり高くなったりと、10年から数10年ごとに変動する。今年は中部が高く沿岸が低い。昨年12月は中部が低くなり初め、沿岸は高かった。PDOは10年から数10年ごとに変動する。21世紀に入り2000年頃から2010年代前半は沿岸が低いパターンで、2014年以降は高いパターンが続いていたが、今秋から低い方へ変わってきた。
 

秋からラニーニャ現象発生:北米西沖は低水温
図7 海面水温平年差(2021年12月上旬) 気象庁
 

昨冬のラニーニャ現象との違い:北米西沖は高水温
図8 海面水温平年差(2020年12月上旬) 気象庁
 
 ここ30年で、ラニーニャ現象が発生し、北米沿岸が低水温の年の12月の上空の天気図を合成すると、アリューシャンの南で高気圧が強まり、北米西部は低気圧、北米東部が高気圧となり、図9の今年12月中旬の上空の天気図のパターンと同じになった。
 

アリューシャンの南に高気圧、北米西部に低気圧、北米東部に高気圧
図9 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
2021年12月10~19日(平年値は1991年~2020年の平均値)
(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 一方、図10は昨年12月の天気図で、ラニーニャ現象が発生しても北米沿岸が高水温の12月は、昨年12月と同様にアリューシャンの南は低気圧、北米西部は高気圧、北米東部は低気圧になり、図9とは反対のパターンとなる。米国では15日にも南西部のニューメキシコ州から中西部のミシガン州にかけて強風が吹き荒れ、アイオワ州など複数の州で竜巻警報が出された。今年12月は中旬を中心に偏西風が大きく蛇行し、西部のカリフォルニア州には寒気が南下したため山岳部では大雪、平野部では大雨となって道路が一部崩壊する被害が出た。
 

昨年は、アリューシャンの南に低気圧、米国西部に高気圧、米国東部に低気圧
図10 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
2020年12月(平年値は1991年~2020年の平均値)
(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 米国に季節外れの大規模な竜巻が発生した原因の1つには、ラニーニャ現象と北米西沖の低水温があると思われる。しかし、過去の12月に同様の海水温の分布になっても大規模な竜巻はほとんど発生しなかった。これは温暖化が背景にあると考えられ、今年12月は亜熱帯高気圧が強く暖気が北上したうえに、水蒸気量の増加で、竜巻の元となる積乱雲が今まで以上に発達しやすくなっていると思われる。
 
台風22号フィリピンに上陸
 ラニーニャ現象は例年11~12月にピークを迎える。フィリピン沖の海水温は平年より高く、12月半ばから対流活動が活発になり、13日フィリピンの南東海上で台風22号が発生し、16日にはフィリピン東部のシヤルガオ島に上陸した。フィリピンでは38万人が避難し、数日前から続く豪雨により河川が氾濫したため浸水被害が広がった。フィリピン国家警察の20日発表によると、死者は375人にのぼり、56人が行方不明、負傷者は500人となった。
 
 台風22号は上陸前には中心気圧が915hPaまで下がり猛烈な台風となってフィリピン中部を直撃し、最大瞬間風速は83mを超えたと伝えられた。上陸1日前の15日15時の中心気圧は975hPaだったが、わずか24時間の間に60hPaも下がった。温暖化が進行すれば、中心気圧が急に低下し勢力が急激に強まる台風は今後も出現する可能性がありそうだ。
 
年末寒波
 台風22号とは別に、南シナ海では14日に熱帯低気圧が発生し、南シナ海を西進して、17日にマレー半島に上陸した。マレーシアでは豪雨により各地で大規模な洪水が発生し、5万人以上が避難生活を余儀なくされるなど、影響が広がっている。
 
 ラニーニャ現象の発生で太平洋西部では熱帯の対流活動が活発化している。フィリピンやマレーシアの異常気象の間接的な影響が、日本にも出始めている。活発な対流活動は上昇した気流が大陸の偏西風を蛇行させる働きをし、日本付近に寒波をもたらす。12月中旬前半までは暖かな師走だったが、17日から寒波の第一陣がやってきて、日本海側や北日本の太平洋側で本格的な降雪となり、鹿児島県の山間部や四国、紀伊半島でも積雪となった。気象庁の1か月予報によると、年末から1月にかけては西日本を中心に断続的に寒気が南下する見込み。日本海の海面水温は高いので、日本海側は大雪の恐れがある。太平洋側は乾燥した晴天が多くなる。低温と乾燥した天候が続くので、新型コロナウィルスの感染拡大も懸念される。
 

 
 
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