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春からの少雨(あぜみち気象散歩62)  2017-06-26

●気候問題研究所 副所長 清水輝和子  

 
今春の少雨
 この春は晴天が多く、3~5月の降水量はほぼ全国的に少なく、少雨となった。とくに北日本・東日本の日本海側では、それぞれ平年の77%、72%と、かなり少なかった(図1)。北海道の紋別では平年の36%、和歌山では46%、松江では55%と、春としては観測開始以来の記録的少雨となった。6月に入り、北日本では上空寒気の影響で雨が降り、沖縄では梅雨前線が活発化して一時大雨が降ったが、東日本の太平洋側と西日本では少雨が続いた(図2)。6月17日には、四国の吉野川水系水利用協議会は徳島県と香川県で取水制限を開始した。
 6月の下旬になってから、南海上に離れていた梅雨前線が北上し、やっと梅雨らしい天候となってきた。
 

春は全国的に少雨
図1 降水量平年比(%)(2017年3~5月) 気象庁
 
 

6月上・中旬は北日本・沖縄で多雨、東・西日本は少雨
図2 降水量平年比(%)(2017年6月1日~20日) 気象庁
 
山林火災多発
 大型連休明けの5月8日、東北地方では西風が強まり、宮城県、岩手県、福島県で山火事が相次いだ。宮城県では田植え前の育苗ハウスが焼失するなどの被害があった。中でも岩手県釜石市で発生した山林火災は、約400haもの範囲を焼く大規模な山火事となった。22日には完全に消し止められたが、鎮火までに2週間もかかった。山林火災が多発した8日は、東北地方を中心にフェーン現象による山越えの乾燥した強風が吹き荒れて、延焼を拡大させた。雪が解けて新芽が出る前の春のこの季節は、山野が乾燥するので山火事の最も多いシーズンだ。今春の山林火災は、少雨の影響で例年以上に乾燥したことも被害が広がった原因のひとつと考えられる。
茶や果樹など農作物への影響
 春の少雨は、新茶の生育など農作物にも影響した。宇治茶で有名な京都府産一番茶は3月の少雨のため、京都茶市場で昨年に比べて1割高となった。静岡県産は3~4月に気温が上がらず、降雨が少なかった影響で生育が遅れ、静岡茶市場では昨年の1割高となった。
 梅の産地の和歌山、群馬では4~5月の少雨で実の肥大が遅れて小玉傾向となり、東京市場での5月下旬の梅の価格は昨年より2割も高くなった。
 
 6月に入り、関東以西で入梅しても、東日本の太平洋側から西日本では雨が降らず、農地では水不足の影響が出始めた。とくに、4月下旬頃から降水量の少ない状態が続き、水不足が深刻化している地域があった。九州北部の佐賀県や長崎県では乾燥のため害虫が増え始め、佐賀県ではため池の水が減少して水田に水が供給されない地域もあった。高知県土佐町では渇水のため田植えが大幅に遅れ、6月中旬になっても田植えができなかった。関東甲信地方では空梅雨で桃や梨、ブドウなど果実の生育や果樹への影響が懸念された。
少雨の原因
 図3の3~5月の上空の風の流れを見ると、この春の特徴として、大陸のバイカル湖付近で高気圧が強まり偏西風が北上して蛇行が大きくなり、日本の東海上の低気圧に向かって流れる傾向が目立った。日本の上空には大陸から乾いた北西の風が入ったので、雨が降らず、晴れの日が多かった。ユーラシア大陸を流れる偏西風の上流をたどると、ロシア西部は低気圧となって偏西風は南下し、欧州では高気圧が強まって北上している。欧州からの波がユーラシア大陸を大きく蛇行しながら伝播して、日本に乾いた風を送る流れが続き、少雨の原因となった。
 

春の上空は日本付近に乾いた北西風が入る
図3 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2017年3~5月(平年値は1981年~2010年の平均値)

 偏西風の流れ 
:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 
 春の上空の流れの特徴は入梅後も続いた(図4)。欧州では高気圧が発達し、広域で熱波に見舞われた。英国では21日、ロンドン西部で最高気温が33.9℃に達し、6月の国内最高気温を更新。ポルトガルでは17日、40℃を超える熱波に見舞われ、春からの少雨の影響もあって各地で約60件の森林火災が発生して64人が死亡したと伝えられた。
 

入梅後も乾いた北西風入る
図4 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2017年6月10~19日(平年値は1981年~2010年の平均値)

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 偏西風の流れ 
:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 
 図4を見ると、6月中旬も欧州で偏西風が北上し、ロシア西部で南下、その東のバイカル湖付近で北上して大陸東岸で南下するという、春の流れと同じパターンとなった。関東以西では6~7日に入梅したが、日本付近は引き続き大陸から乾いた風が入り、空梅雨となった。北日本から北陸には寒気が入って雨が降ったが、入梅は遅れた。また、太平洋高気圧は例年より強いが、本州の南海上では北への張り出しが弱いため、梅雨前線は南の沖合に離れて停滞したことも少雨の一因だ。一方、沖縄では梅雨前線が停滞して活発となり、大雨の被害が発生した。
今夏の少雨に注意
 昨年も5月と入梅後の少雨で東・西日本で水不足となった。関東北部の水源地では、今年は冬季の降雪量が昨シーズンほど少なくはなかったので、ダムの貯水率は昨年の様に下がってはいないが、少雨が続いているので低下傾向だ。渡良瀬川流域では今後も回復するだけの降水量が見込めないことから、6月23日に10%取水制限を開始した。利根川上流のダムも、今後の降水量によっては貯水率が減少する可能性がある。
 気象庁の6月23日発表の3か月予報によると、8月は太平洋高気圧が日本付近に強く張り出して猛暑となり、東・西日本と沖縄・奄美では晴天が多く少雨傾向の予想だ。この夏は少雨や水不足に警戒する必要がありそうだ。

 
 
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