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“2波数型”で花冷え(あぜみち気象散歩73)   2019-04-24

●気候問題研究所 副所長 清水輝和子  

 
寒の戻り
 この春は暖かくなったり、急に冬の陽気が戻ったりと気温の変動が激しい(図1)
 2月半ば過ぎから全国的に気温が上昇し、3月に入っても暖かな日が多かった。さくらの開花も早く、20日に長崎で開花が始まり、東京都心では21日に開花するなど、東日本では平年より4~6日早かった。そして、東京は27日に全国で最も早く満開を迎えた。
 

2月後半から気温上昇、3月下旬北日本から寒の戻り
図1 地域平均気温平年偏差時系列(2019年2月~4月)(気象庁)
 
 このまま順調に季節が進むのかと思いきや、3月末から寒の戻りとなった。
 4月1日は冬型気圧配置になり山陰や北陸、東北の日本海側で雪が降った。ダイコンやトマトの産地である広島県庄内原市高野では、4月だというのに1~3日に30cmの降雪を観測し、積雪の深さは最大で18cmとなった。地元ではダイコンの種まき直後の大雪に不安の声が出ていたという。
 4月10日には関東甲信の山沿いや北陸、東北の太平洋側で季節外れの積雪となった。北陸や関東甲信では、さくらの花に雪が積もる珍しい光景が見られたが、長野県飯田市では、満開を迎えたソメイヨシノの枝が雪の重みで折れる被害があった。さくらは、近年の温暖化で入学式前には散ってしまうことが多いのだが、この春は花冷えで開花期間が延びて、長く楽しめたのは幸いだった。
 
上空の流れは“2波数型”
 北極寒気は2月半ば頃から蓄積期に入り、3月中旬にかけて日本付近は暖かな空気におおわれた(図2)
 

北極寒気は蓄積型
図2 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2019年2月14日~3月15日(平年値は1981年~2010年の平均値)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 初春の訪れは早かったが、3月下旬になると北日本から寒気が南下した。アラスカで暖気が北上して気圧の尾根が発達し、高気圧が現れた(図3)
 

北極寒気は2つに分かれ“2波数型”
図3 500hpa北半球平均天気図 高度と平年偏差(気象庁の図を基に作成)
2019年3月29日~4月2日(平年値は1981年~2010年の平均値)
:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 大陸ではバイカル湖付近でも気圧の尾根が発達し、アラスカ付近の高気圧と連結して、北極寒気団は大きく2つに分裂した。1つはロシア西部・グリーンランドからカナダ東部へ、もう1つは日本付近から太平洋へと分かれて南下した。このタイプは“2波数型”と呼ばれ、日本に寒気の南下が続くため、冬季は寒波、春ならば寒の戻りや花冷えで寒くなる。
 

南高北低型で南風入り気温上昇
図4 地上付近の天気図(気象庁の図を基に作成)
2019年4月5日12時

 
 今春は南の暖気が例年より強いので、寒気がやや北へ後退すると、地上付近では南に高気圧、北が低気圧となる“南高北低型”の気圧配置になり、北の低気圧に向かって南風が流れ込んだ(図4)。4月5~7日は都心でも20度を超える暖かな日になるなど、気温の変動が激しかった。
 
太平洋側季節外れの大雪
 4月8~9日は、秋田の上空5000m付近で-33.7℃の寒気が南下し、全国的に寒くなった。真冬並の冷たい空気におおわれたところへ、10日に低気圧が太平洋岸を東進したので、関東甲信地方の内陸や山沿いでは雪が降り、軽井沢で15㎝、奥日光では26cmの積雪となった(図5)
 

太平洋岸を低気圧通り太平洋側降雪
図5 地上付近の天気図(気象庁)
2019年4月10日15時(左)、11日12時(右)

 
 低気圧は11日に東北の東海上へ進み、東北の太平洋側に降雪をもたらした。岩手県一関市の祭畤(まつるべ)では24時間降雪量の日最大値31㎝を観測し、1984年以来4月として第1位になるなど、各地で春の大雪となった。
 
エルニーニョ現象と4月の太平洋側の降雪
 東京で最も遅い春の雪の記録は4月17日で1967年、1969年、2010年の3回あった。このうち1969年と2010年はエルニーニョ現象が発生していた。エルニーニョ現象の統計データのある1949年以降では、2番目に遅い降雪は1965年の4月11日で、この年もエルニーニョ現象発生中だった。前回発生した2015年4月も、8日にみぞれを観測している。この春もエルニーニョ現象は発生中で、4月10日は東京都心での降雪は観測されなかったが、関東周辺では季節外れの雪となった。過去にエルニーニョ現象が発生した年の4月は、関東など太平洋側で雪が降ることがあり、しかも遅い傾向がある。
 5月にかけて寒気の南下は次第に弱まると予想され、初夏の陽気が多くなるが、北日本中心に一時新緑寒波の吹く日もあり、気温は変動するだろう。

 
 
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