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寒暖変動大きな春(あぜみち気象散歩91)  2022-04-28

●気候問題研究所 副所長 清水輝和子  

 
寒暖差で春バテ
 2月は西日本中心に寒かったが、3月は一転して気温が上昇し、4月にかけて暖春となっている(図1)。とはいえ、10日~2週間ごとに寒の戻りがあって、寒暖変動をくり返している。しかも、上昇時には季節が1か月以上も進み変動の幅が大きい。気温の変化に身体がついていけず、体調不良になる“春バテ”に悩む人が多いようだ。
 

気温変動の大きい春
図1 地域平均気温平年偏差5日移動平均時系列(2022年2月~4月)(気象庁)

 
暖春だが寒暖差が大きい
 東京の最高気温と最低気温を3月1日からグラフにすると、毎日の変動がよくわかる(図2)。3月は最高気温と最低気温の差である日較差10℃以上の日が20日もあった。14日には最高気温が平年を10℃も上回る24.1℃まで上がり、5月中旬頃の陽気となった。そうかと思えば、22日には最低気温が1.2℃に下がり、雪やミゾレが降った。
 

東京都心も気温の変動が大きい
図2 東京の最高気温と最低気温の時系列(2022年3月~4月)
(気象庁のデータから作成)

 
 前日の21日には経済産業省から東京、及び東北電力管内に初の「電力需給ひっ迫警報」が出され、節電の協力が呼びかけられた。というのも、3月16日に発生した福島県沖の地震の影響で電力需給が厳しくなると予想されたためだ。幸いなことに節電の効果が現れ、停電は免れた。
 
 4月に入ると南西諸島を中心に気温が下がり、4日の東京の最高気温は9.8℃と真冬の寒さが戻った。山梨県河口湖では雪が降り、11cmの積雪となった。その2日後の6日の東京の気温は21.5℃に上昇し、10日には26.8℃と25℃を超える夏日が現れた。岩手県宮古では11日に早くも真夏日が観測され、31℃まで上昇した。
 寒暖差が大きくなると自律神経が乱れ、心や体に不調を訴える人が多くなるのだそうだ。1週間のうちに真冬から6月下旬頃の夏の陽気に急激に変化したのだから“春バテ”するのも無理はない。変動する春は、睡眠とストレス、過労に気をつけることが大切だという。
 
上空の天気図は暖春型
 3月の上空の天気図では、日本付近は暖かな空気に覆われ暖春だったが、北極寒気は放出傾向だった(図3)。東海上で高気圧や気圧尾根が強まると、シベリアにから寒気が南下して彼岸の雪を降らせるなど、気温は大きく変動した(図4)
 
 

3月の日本付近は暖かい空気に覆われる
図3 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
(2022年3月)(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 

寒気南下し、彼岸の雪
図4 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
2022年3月18~22日 (気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 
 4月の上空の天気図も、日本付近は例年より暖かな空気に覆われたが、北極寒気は放出型だった(図5)。4月半ばには台風1号がフィリピンの東海上を北上した。大型で非常に強い勢力に発達して、15日昼過ぎ小笠原諸島に最接近した(図6)。父島では最大瞬間風速46.5㎧を観測し、全世帯約1200のうち半数以上が一時停電した。台風1号は16日には温帯低気圧に変わったが、日本付近に寒気を引き込み肌寒くなった(図7)
 
 

4月も暖かな空気に覆われる
図5 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
2022年3月27日~4月25日(気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 

台風1号小笠原諸島に接近
図6 地上天気図 2022年4月15日9時(気象庁)
 
 

台風が上空の寒気を引き込む
図7 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)
2022年4月16日 (気象庁の図をもとに作成)

:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 下旬には寒気は去って上空は暖かな空気に覆われ、22日頃から気温は急上昇した。23日甲府では30℃を超える真夏日となった。地上の天気図(図8)を見ると、移動性高気圧が本州付近を通過後、東海上で強まり日本付近を覆った。また、低気圧が中国北部から沿海州、オホーツク海を通り、高気圧から吹き出す風が低気圧に向かって暖かな南風を運んだ。4月はたびたびこのパターンが現れたので気温が急上昇した。温暖化すると、低温の期間に比べて高温の期間に、より極端な気温が現れやすくなるようだ。
 

移動性高気圧が東海上で強まり日本付近を覆う
北を通る低気圧に向かって南風入る
図8 地上天気図(2022年4月21日6時) (気象庁の図をもとに作成)
 
北米穀倉地帯の天候
 日本は暖春だが、北米は寒い春になっている。4月の上空の天気図(図5)を見ると、北米は米南西部を除いて寒気が南下しやすくなっている。春だというのに季節外れの寒波が襲い、カナダのブリティッシュコロンビア州マッケンジーでは13日の最低気温が氷点下11℃を下回り、米ワシントン州シアトルでは同日に0℃まで下がった。モンタナ州とノースダコタ州では30cmを超える積雪になり、吹雪に見舞われたという。
 
 カナダ南西部や米中西部は大豆やトウモロコシ、小麦などの穀倉地帯で、4月に種まきが始まるが、積雪や降雨で作付けが遅れる恐れがある。気象庁の1か月数値予報天気図では5月も東部を中心に多雨傾向が予想される。作付けが遅れると秋の収穫が遅れるので、降霜被害のリスクが高まる。
 
 一方、米西部では、今年に入り少雨が続いている。ユタ州とアリゾナ州にまたがるパウエル湖は米国2番目に大きな貯水湖で、1月からの少雨で水位が下がり、過去最低記録だった昨夏より10mも低下した。テキサス州では例年夏季を中心に発生する山火事が3月末までに700件以上も発生するなど、各地で少雨の影響が深刻化している。米西部の干ばつは年々深刻化しており、2000~21年にかけての干ばつは過去最悪だったとする研究結果が発表された。今年4月の土壌水分は米国の西半分で深刻な干ばつ状態で、中西部の西側も土壌水分は少なく、干ばつエリアが広がった(図9)
 

米西部干ばつ深刻化、中西部にも広がる
図9 米国の干ばつモニター(2022年4月21日発表)
(ネブラスカ大学リンカーン校国立干ばつ緩和センター)

 
 気になるのは夏の天候だ。気象庁の6~8月の暖候期予想天気図によると、北半球の中緯度は日本付近から太平洋、北米大陸から大西洋、欧州にかけて高気圧になり、暖かな空気に覆われる予想となっている。北米は亜熱帯高気圧も強く米国南部を覆う。主要な穀倉地帯では高温・少雨の恐れがある。昨年も北米西海岸では記録的熱波と干ばつに見舞われたが、今夏は中西部へも高温・少雨の地域が広がり、穀物生産に影響が出る可能性がある。コロナの回復期に入り、世界的に穀物需要が高まっている。それに加えて、ロシアのウクライナ侵攻によって両国の穀倉地帯からの輸入が滞るため、穀物相場は高騰している。ロシアとウクライナは、世界の小麦輸出全体のおよそ4分の1から3分の1を占めているので影響が大きい。
 
 この夏、さらに気になるのは欧州の天候だ。予想天気図によると、欧州も高気圧に覆われ、アフリカの亜熱帯高気圧が地中海西部に張り出し、熱波と少雨の可能性がある。欧州で穀物生産が低下すると世界の穀物価格がさらに上昇する。ウクライナ情勢で世界の物格上昇が止まらないなか、中東やアフリカなど小麦を輸入に頼る国々では貧困にあえぐ人々の食糧不足がさらに厳しい状況に置かれることが懸念される。
 ロシアとウクライナとの戦争が1日も早く終結することを祈る。

 
 
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