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夏秋ピーマンの日射制御型拍動自動灌水  2010-04-01

●兵庫県立農林水産技術総合センター北部農業技術センター 福嶋 昭  

 
背景と概要
 露地の夏秋ピーマン栽培は、一般に畝間灌水が行われており特に夏期における土壌水分の過不足は、障害果の発生が増加し、樹勢の衰えから収量も減少し産地では大きな問題となっている。このことから、気象条件に左右されない安定した夏秋ピーマン栽培のための栽培管理技術の確立が強く要望されている。
 
 そこで、電源の無い山間地でも設置可能な日射制御型拍動自動灌水装置による点滴灌水を行った結果、低コストで本灌水装置を導入でき肥効調節型肥料を拍動タンク内に投入する方法により、灌水同時施用による省力化と安定的な収量及び品質が確保できることを実証した。
症状
 障害果は主として、尻腐れ果、日焼け果、着色果及び変形果などがある。
 
(1)尻腐れ果:果頂部が水浸状となり、しわを生じた後に褐変化する(写真1)
(2)日焼け果:果実の陽光面の一部で脱緑がみられ、しわが寄り時間の経過とともに乾燥白化する。
(3)着色果:果実の陽光面に黒褐色の色素が発現し品質を低下させる。
(4)変形果:果実の肥大が一方に偏りいびつに変形する(写真2)
 
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写真1                写真2
原因
 障害果の主な発生原因としては、夏期の高温・乾燥、強日射や畝間灌水による土壌水分の急激な変化や停滞水による根の痛みによる樹勢の衰えが報告されている。従来、露地夏秋ピーマンは、水田転換畑での栽培が多く主として畝間灌水が行われていることから、土壌水分管理が難しく障害果の発生や収量低下が起こっている。
対策
 日射制御型拍動自動灌水装置〔特許第3787628、(独)近畿中国四国農業研究センター開発〕は、日射量に応じてソーラーパネルで発電した電力により、ろ過槽の中のポンプにより高架に設置した拍動タンクへ揚水し、タンク内の水位が一定レベルに達すると電磁弁が開き落差を利用してマルチ内に敷設した点滴チューブにより灌水を行う。点滴灌水によりタンク内の水位が低下すると電磁弁が閉じ、再貯水を行う装置である(図1、写真3)。追肥は肥効調節型肥料(例:エコロング424、40日タイプなど)をネット等に入れ、貯水タンクに投入し灌水と施肥を同時に行う方式である。
 
図1
図1 日射制御型拍動自動灌水装置のしくみ
 
写真3
写真3 ほ場での灌水装置の設置状況
 
(1)ピーマンの灌水量は日射量に比例して増減し、灌水はじめから8月中旬までは、約3リットル/株・日で推移したが、その後9月下旬までは2~1.5リットル/株・日となり、10月は1.5リットル/株・日以下であった(図2)。8月上旬から9月下旬における土壌水分は、拍動灌水区で常にpF値1.2~2.0で適湿に推移したが、対照の慣行畝間灌水区ではpF値2.0~2.5のやや乾燥状態であった(図3)
 
図2
図2 夏秋ピーマン栽培における日射量及び拍動灌水量の推移(2008年)
 
図3
図3 夏秋ピーマンの拍動灌水が土壌水分(pF値)に及ぼす影響(2008年)
(2)ピーマン品種「京波」の10a当たりの収量は、慣行(畝間灌水・慣行施肥量)区が10,198kgに対し、拍動灌水慣行施肥量区が11,040kg、同30%減肥区が10,618kgとなり、それぞれ8%、4%の増収となった(表1)。拍動灌水期間中の障害果発生率は、拍動灌水の慣行施肥量及び同30%減肥区とも慣行区に比べて少なくなり、これに伴い商品果率が向上したと推察される(図4)。さらに、果実硬度計(藤原製作所製KM型、円柱形プランジャーφ5mm)で測定したピーマン果実の貫入抵抗値は、ピーマン品種「京波」及び「さらら」ともに拍動灌水区が慣行区に比べ数値が低く柔らかいことが認められた(図5)
 
表1 夏秋ピーマンの拍動灌水が収量(kg/10a)におよび酢影響(2009年)
表1
 
図4
図4 夏秋ピーマンの拍動灌水が障害果の発生に及ぼす影響(2009年)
 
図5
図5 拍動灌水がピーマンの果実硬度に及ぼす影響(2009年9月)
 
(3)試験区毎の肥料代は、慣行区に比べ拍動灌水・肥効調節型肥料タンク内投入による30%減肥区で10a当たり7,200円の節減が可能であった。拍動灌水による収量と装置の導入、償却費を勘案した10a当たりの所得額の概算は試験結果から、肥効調節型肥料タンク内投入による30%減肥で慣行区に比べ63,000円の増益であった。また、拍動灌水での慣行施肥量区は、肥料代が慣行区より17,500円高いが、増収効果が高く最終的な所得は慣行区に比べ153,000円増加した(表2)
 
表2 夏秋ピーマンの所得額概算 (10a当たり・千円未満四捨五入)
表2
 
 以上のことから、露地夏秋ピーマンの日射制御型拍動自動灌水による栽培は、日射量に応じた点滴灌水により土壌水分が好適に保たれ、肥効調節型肥料タンク内投入による灌水同時施肥により、一日当たりの施用量が一定となる定量管理法に近くなる。このため、植物体のストレスが少なくなり樹勢の維持が可能で果実品質の向上、収量の増加につながったと考えられる。
 
 また、本灌水装置は誰にでも簡単に使いこなせ、特に夏期の収量増と高品質化が図られることから、栽培技術の高い生産者に近い収量、品質が確保でき、その上、減肥栽培が可能であり農家経営の安定に貢献すると考えられる。
参考資料
(1)森永邦久・吉川弘恭・中尾誠司・関野浩二・村松 昇・長谷川美典2004、露地栽培ウンシュウミカンにおける周年マルチ点滴かん水同時施肥法の開発、園学誌3:45-49
(2)吉川(山西)弘恭・横田和志・松本由利子・吉川省子・渡邊修一・中尾誠司2005、太陽の光で作物に水を与える―ソーラーポンプを利用した低コスト日射制御型灌水装置の試作―、農及園80:440-445、569-571
(3)吉川弘恭・村口 浩・沖本さやか・渡辺修一・吉川省子・中尾誠司2007、化学肥料を削減できる低コスト日射制御型拍動自動灌水装置.農業技術体系土壌肥料編、農山漁村文化協会、録第18号、第6-①巻、原理112の16-19

※本研究成果は、農林水産省経営局の産学官連携経営革新技術普及強化促進事業「露地栽培への日射制御型拍動自動灌水装置の導入による省力・低コスト・環境保全型生産技術の普及」(2007~2009年度)により実施したものである。
※日射制御型拍動自動灌水装置は、「ソーラーパルサー」の商品名で有限会社プティオが販売している。
http://www.putio.co.jp/index.html
 
 
※※改訂版「日射制御型拍動自動灌水装置による夏秋ピーマンの増収および高品質栽培技術」(2012年9月公開)を>>こちらに掲載
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