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暑熱時にはビタミンA添加量を増やす必要がある  2012-03-05

●広島県立総合技術研究所 畜産技術センター 河野幸雄  

 
背景と概要
 ビタミンAは肥育牛の健康に必須である一方で、脂肪交雑を入り難くする作用があることが明らかにされている。このため、黒毛和種肥育牛の飼育現場では、高品質な牛肉を目的としたビタミンAの制御が行われており、肥育前期から中期にかけてビタミンAは抑制的に管理され、血中ビタミンA濃度を30~50IU/dL程度で推移させる場合が多い。
 肥育牛は、体内でビタミンAを合成できないため、飼料中の天然または人工的に飼料に添加されたビタミンA(製剤)を吸収して利用するか、飼料原料に含まれるβカロテンを吸収しビタミンAに変換して利用するしかない。従って、肥育牛のビタミンA制御を行う場合、管理者は飼料中に目的量のビタミンA給源(ビタミンA添加剤かβカロテンを含む牧草類等)を与えなければならない。
 しかし、一定量のビタミンA給源を与えていても、ビタミンA欠乏が生じる場合があり、特に夏場や秋口にビタミンA欠乏による事故が増加することは、肥育農家や獣医師の共通した見解である。
症状
 ビタミンA摂取量が不足すると、肝臓中に蓄積されたビタミンAが動員されるため、肝臓にビタミンAが残っている間は、特に問題が生じることはないが、やがて肝臓のビタミンAが枯渇すると、肥育牛はビタミンA欠乏に陥る。ビタミンA欠乏の症状やその程度は、個体によって異なるが、多くの場合、食欲低下・増体の停滞・飼料効率の悪化・被毛の粗剛化・皮膚の炎症・関節の腫脹・視力障害(失明を含む)・尿石症などの症状が表れ、重症の場合は死亡事故に至る。
原因
 夏季にビタミンA欠乏による事故が増加する原因を探るために実施した、黒毛和種去勢肥育牛を使った実験では、血中ビタミンA濃度を50IU/dL前後に維持するために必要なヘイキューブ由来のβカロテン量は春季には体重1kgあたり15μgであったが、8月には38μg以上に増加した。また、ルーサンミールペレットを用いた別の試験では、黒毛和種去勢肥育牛の血中ビタミンA濃度50IU/dLを維持するために必要なβカロテン量は、体重1kgあたり概ね20μgであったが、同量の給与量を与えても7月下旬以降は血中ビタミンA濃度50IU/dLを大きく下回り40IU/dL未満で推移した。また、このような傾向はビタミンA添加剤を用いた実験でも同様の結果が得られた。
 このように、夏季の暑い時期になると、血中ビタミンA濃度を維持するために必要なビタミンAやβカロテン含量は増加することがわかった。ビタミンA要求量は、飼料中の脂肪含量、タンパク質含量、増体速度、ストレスなど、様々な環境要因によって変動することが知られているが、特に暑熱環境の影響は大きく、ビタミンA要求量を増加すると考えられ、このことが夏季にビタミンA欠乏が増加する原因と思われる。
対策
 肥育牛のビタミンA制御を行うために、ビタミンA給源(ビタミンAを含む添加物、βカロテンを含む牧草・ペレットなど)を補給する場合、給与量を夏季とその他の季節を区分し、夏季にはその他の季節の2倍以上とし、欠乏症の発生を防止する。その場合、ビタミンA給源の給与量の目安としては、βカロテンを含む牧草やペレットの場合はβカロテン量として体重1kgあたり20μg、ビタミンAを含む添加物の場合はビタミンA量として体重1kgあたり6IUが夏季以外の1日必要量とし、夏季はそれぞれ2倍量以上を給与する。
 
(注意:ビタミンAの利用効率には暑熱以外の各種要因も影響するため、給与量については各飼養条件において血液中のビタミンA含量をチェックして決定する必要がある)
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