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高温登熟性に優れる暖地向き水稲品種「おてんとそだち」  2012-03-28

●宮崎県総合農業試験場 作物部 永吉嘉文 

 
背景
 近年、九州をはじめとする暖地地域では米の1等米比率が低下しており、その要因として登熟期の高温による背白粒、基白粒などの白未熟粒や、充実不足粒の増加が指摘されている。そのような中、当地域の主力品種である「ヒノヒカリ」は、高温による白未熟粒の発生程度が他の品種に比べて高いという評価が大勢となってきており、各県では高温登熟性の優れた品種への転換や、移植時期の後進化等の栽培法の改善による品質向上対策が講じられている。
 しかしながら、依然として外観品質の改善が困難な地域もあり、より高温登熟性に優れる品種に対する要望が高まっている。また、気象変動に伴う台風被害も増加傾向にあり、耐倒伏性に優れる品種も求められている。
 そこで、宮崎県総合農業試験場では農林水産省指定試験事業により、暖地向きで高温登熟性に優れ耐倒伏性が強く極良食味の「おてんとそだち」を育成した。ここに、本品種の育成経過と特性概要等について報告する。
 
 
おてんとそだち(左)とヒノヒカリ(右)
おてんとそだち(左)とヒノヒカリ(右)
育成経過
 「おてんとそだち」は2000年、極良食味、良質、いもち病抵抗性中を目標に、中生、極良食味、いもち中の「南海149号」を母、極良食味、良質の「北陸190号」を父として人工交配した組合せに由来する(図1)
 
「おてんとそだち」の系譜図
図1「おてんとそだち」の系譜図
 
 交配後、同年冬にF1を養成し、初期世代は集団育種法で世代を進め、2002年のF4世代に個体選抜を行い、以後、系統育種法により選抜固定を図った。2004年F6世代に「向系452」の系統名で生産力検定及び特性検定試験に供試し、2006年F8世代に「南海166号」の系統名で関係県に配付し、その地方適応性を検討した。高温登熟性については、早植え栽培およびハウス栽培により高温条件を作出し検定した。
 2011年、高温登熟性に優れること、外観品質が安定して良いこと、耐倒伏性が強いこと、「ヒノヒカリ」並の極良食味であることから、宮崎県において奨励品種に採用された。また同年6月、品種登録申請を行い、10月に「おてんとそだち」として出願公表された。品種名は、宮崎の豊かな太陽の恵みをいっぱいに浴びて育った美味しいお米であることをイメージしたものである。
特性概要
「おてんとそだち」の特性概要を表1に示した。
 
表1「おてんとそだち」の特性概要
「おてんとそだち」の特性概要
2004~9年の平均値
1)1(上上)~9(下下)の9段階評価
2)1(1等の上)~10(規格外)の10段階評価
3)食味官能試験における場内産ヒノヒカリに対する値

 
1 栽培特性
 「ヒノヒカリ」に比べ出穂期が3日、成熟期が5日早く、育成地では中生の早(クジュウ級)に属する。玄米収量は「ヒノヒカリ」より8%多い。葉いもち抵抗性は“中”、穂いもち抵抗性は“やや弱”で、真性抵抗性は“Pia,i”を持つと推定される。縞葉枯病に対しては“罹病性”、白葉枯抵抗性は“弱”である。穂発芽性は“中”、脱粒性は“難”である。稈長が「ヒノヒカリ」より12cm短く、耐倒伏性は“強”である。
 
2 高温登熟性
 育成地で実施した高温登熟性検定試験6例(2007~9年、5月植え及びガラス室)、鹿児島県農業開発総合センターで実施した同試験12例(2006~9年、4月植え、5月植え及びガラス室)の判定値の平均を表2に示した。「おてんとそだち」は、暖地の同熟期の中生の基準品種と比較すると、“やや強”の「コガネマサリ」より強く、“強”の「金南風」に近かった。また、“弱”の「ヒノヒカリ」より明らかに高い数値を示した。
 
表2「おてんとそだち」の高温登熟性
「おてんとそだち」の高温登熟性
宮崎6試験(2007~9)、鹿児島12試験(2006~9)の平均
判定値:強5~弱1の5段階評価

 
 また、出穂後20日間の平均気温と背白粒、基白粒の発生程度の関係(図2)をみると、被害粒の発生が多くなる27℃から30℃に近い一層の高温条件に至るまで、「おてんとそだち」は背白粒、基白粒の発生程度が安定して「金南風」並に低く、優れた高温登熟性を有するものと考えられた。
 
出穂後平均気温と背白基部白粒発生程度
図2 出穂後平均気温と背白基部白粒発生程度
注)2007~9年の平均
発生程度は(背白粒+基部白粒)の整粒に対する比率

 
3 品質および食味特性
 「おてんとそだち」の玄米品質は、心白、乳白の発生が少なく、「ヒノヒカリ」と比較して明らかに優れ、検査等級も高い(写真1、表1)
 「おてんとそだち」の食味は、官能評価における総合値は「ヒノヒカリ」を基準とした場合ほぼ同等である。また、食味に影響する理化学特性について、タンパク質含有率は同程度、アミロース含有率はやや低い。
 
「おてんとそだち」の玄米品質
おてんとそだち(左)とヒノヒカリ(右)
写真1「おてんとそだち」の玄米品質(2010年、宮崎総農試産)
普及の見込み
 「おてんとそだち」は2011年から一般栽培が開始された。宮崎県では高温登熟性、耐倒伏性に優れる特徴を活かし、「ヒノヒカリ」の品質改善が困難な地域、移植時期が早く出穂期が高温になる地域等を中心に、普及を進めていく計画である。
参考資料
 永吉嘉文・中原孝博・黒木智・齋藤葵・薮押睦幸・角朋彦・川口満(2011)高温登熟性に優れる水稲新品種「南海166号」の育成 日作九支報 77:1-4
 永吉嘉文・中原孝博・黒木智・齋藤葵・井場良一・加藤浩・山下浩・三枝大樹・竹田博文・堤省一朗・上田重英・若杉佳司・川口満・吉岡秀樹・薮押睦幸・角朋彦(2011)高温登熟性に優れる暖地向き水稲新品種「おてんとそだち」 宮崎県総合農業試験場研究報告 46:1-29

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