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ヒマワリ、シクラメン、ガーベラの日中ミスト冷房と夜間水熱源ヒートポンプ冷房の併用による花きの品質向上  2014-02-04

●(公財)東京都農林水産振興財団 東京都農林総合研究センター 園芸技術科 花き研究チーム 岡澤立夫 

 
背景と概要(要約)
 近年、夏季のハウス内温度は40℃を超え、夜間においても25℃を超える異常な気象条件が続いている。その影響で、開花が遅延し、花が小型化するなど、花き品質に悪影響が出ている。生産者は、撹拌扇や遮光資材などを活用し、温度を下げて対応しているものの、極度の遮光による徒長、生育停滞、開花数減少という問題も生じている。
 ハウス内温度を効率的・効果的に下げる技術として、水を人工的に噴霧して、蒸発するときに発生する気化熱を利用した冷房は有効な手段である。そこで、簡易で安価なミストを利用した冷房と、省エネで実用性の高い水熱源ヒートポンプを併用し、高温対策として有望か検討した。
 
 その結果、切花用ヒマワリ、シクラメンおよび、ガーベラの3品目において、日中ミストと夜間ヒートポンプ冷房の併用冷房効果で開花促進や切り花重の増加など品質の向上がみられた。ヒマワリの切花重と頭花径との間には相関関係が高かったことから、呼吸による過剰浪費が夜温低下で軽減したことが品質向上に寄与したと考えられた。
症状
 開花遅延、花の小型化、収量の低下
原因
 夏季の高温
対策
 日中は、ミスト装置による蒸発冷却を利用した冷房を実施した(図1)
 
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図1 ベンチ下のミスト冷房
 
 ミスト発生には、比較的低い圧力でも30~90μmのミストを作り出すことができる安価で設置も容易であるノズルを用いた(商品名:クールネットプロ、ネタフィムジャパン社製)。ミストの散水径は1m程度であるため、ノズル間を2m幅で配置し、作物に水滴が付着し、病害が誘発されるのを避けるためにベンチ下に設置した。散布したミストは撹拌扇により拡散させ、より長時間、広範囲にミストが広がるようにし、ミストの制御は噴射間隔60~90秒、噴射時間15~20秒とした。これにより、外気温と同程度か、それ以下まで温度を下げることができた。一方、夜間冷房は水熱源ヒートポンプを活用し、熱源として地中冷熱と井戸水を利用した。冷房運転と同時に、巻き上げ式の換気は自動的に閉じるようにした。地中との熱交換は、地中30cm深さに埋設した25φのポリエチレンパイプ(5m/m2)を介して行った。そのほか、ハウス構造として断熱性の高い空気膜方式を採用した(図2)
 
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図2 冷房システム模式図
 
 切り花用ヒマワリの品種は、「F1サンリッチ フレッシュオレンジ」、「F1 サンリッチ レモン」を供試した。冷房区では、切花長が10cm以上短くなったが、切花重、花柄径および頭花径が増加し、品質が向上した。また、開花までの葉数が少なく、8日間の開花促進効果がみられた(表1)
 
表1 冷房が切り花用ヒマワリの生育・開花に与える影響
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 シクラメン「ヘリオス モンテカルロ」においても、冷房区で株高、株径などが改善するなど、生育が良好であった。花柄径は変わらないが、花弁幅が広くなるなど、冷房は花の大きさにも影響を与えた。また、開花日が12日間促進し、有効花数も調査時で30個以上多くなるなど、高温による悪影響が回避された(図3)
 
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図3 シクラメンに対する冷房効果
冷房区(左)と対照区(右)

 
 ガーベラは、「シュクレ」と「アマチ」の2品種を用いた。夏季7~9月の収量は、対照区と比べ冷房区で高く、「シュクレ」で約6倍、「アマチ」で約2倍の収量増となった。また、品種に関係なく、1本あたり切花重などが有意に高かった。市場単価をもとに計算すると、冷房コストは売上高の5~10%程度で、いずれの品種においても十分採算がとれる実用性の高いものであった(表2)
 
表2 ガーベラの売上高に占める冷房費の割合
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※データはヒートポンプハウス86.4m2(5.4m×16m)に換算(栽植密度20株/3.3m2)。小数点以下切り上げ
a)売上高はH22年東京都中央卸売市場年報で算出(7月25.2円/本、8月21.6円/本、9月35.9円/本)
b)ヒートポンプによる冷房消費電力は7月584.1kWh、8月539.1kWh、9月337.1kWh。冷房熱源となる井戸水は湧水量60L/分、約8℃の温度差で10t/日で計算。井戸ポンプは定格出力250W、電力料金は1kWh=16円
c)日中ミスト冷房に使用する井戸水量は7.5L/時とわずかであったため、コスト計算から除外した

 
(図表はすべてクリックで拡大します)
参考資料
農業技術体系・花卉編(追録第15号)、最新農業技術花卉vol.2、畑地農業641号
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