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水稲品種「みねはるか」の愛知県平坦部における高温登熟性の実態調査  2014-02-05

●愛知県農業総合試験場 作物研究部 坂 紀邦  

 
背景と概要(要約)
 愛知県を含む温暖地の「コシヒカリ」は、近年高温による登熟不良、特に白未熟粒の多発による外観品質の低下が問題となっている。一方、愛知県の夏期に冷涼な中山間地向けの奨励品種「みねはるか」は高温寡照耐性に優れるとの報告(坂井ら2011)がある。このため、「みねはるか」について夏期に高温となる、愛知県平坦部で実態調査(2009~2011年、計31地点)を行い、同熟期の「コシヒカリ」(同年、計19地点)と比較した。
 この結果、高温登熟条件下において「みねはるか」は「コシヒカリ」よりも明らかに整粒歩合が高く、白未熟粒発生割合が少なかった。「みねはるか」は、培養窒素の低い、いわゆる地力のやや低いほ場でも「コシヒカリ」に比べ白未熟粒発生割合が低かった。さらに㎡当たり籾数が同じ条件では「コシヒカリ」よりも白未熟粒の発生が少なく、㎡当たり籾数が30,000粒を超えても白未熟粒の増加が少ない特性を有していた。
具体的データ
1 調査年における登熟期間の平均気温
 2009年は平年並~やや低くなった。2010年は6月中旬以降、常に平年値よりも高く推移し、特に7月下旬の出穂期~9月上旬の成熟期にかけて著しく高い、高温年となった。2011年も8月中旬、9月中旬に高くなった(データ省略)。
2「みねはるか」の生育及び収量・食味(表1)
 出穂期は「コシヒカリ」よりもやや遅くなった。稈長は「コシヒカリ」に比べ6~11cm程度短く、強稈であった。精玄米重は、標肥では2009年、2010年ともに「コシヒカリ」対比104、2010年の増肥では「コシヒカリ」対比113、2011年は103となった。玄米タンパク質含量及び食味官能検査結果については、標肥、増肥ともに「コシヒカリ」と同等程度であった。
 
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3「みねはるか」の玄米外観品質
 いずれの年次とも「コシヒカリ」よりも整粒歩合は有意に高くなった。白未熟粒発生割合についても、最も多かった基部未熟粒を始め、乳白粒、背腹白粒のすべての種類で「コシヒカリ」よりも少なくなった。(表2)
 
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 出穂後20日間の平均気温と白未熟粒発生割合の相関は「コシヒカリ」よりも低かった。白未熟粒発生割合は、2010年、2011年の高温年でも、平年並の気象条件で推移した2009年の「コシヒカリ」の発生割合と同等程度であった(図1)
 
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 培養窒素の値が同じ条件(同一ほ場)では、「コシヒカリ」よりも白未熟粒の発生は少なかった。培養窒素の低い、いわゆる地力のやや低いほ場でも白未熟粒の発生は「コシヒカリ」よりも少なかったが、培養窒素が高くなるにつれ、白未熟粒発生割合は減少した。「コシヒカリ」は培養窒素に関わらず、白未熟粒発生割合が高かった(図2)
 
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 2009年、2010年ともに㎡当たり籾数が同じ条件では「コシヒカリ」よりも白未熟粒発生割合が低くなった。「コシヒカリ」の白未熟粒発生割合が高かった2010年でも、㎡当たり籾数が30,000粒を超えても白未熟粒発生割合はほとんど変わらなかった(図3)。著者の経験から、高温登熟性が高い極早生品種は1穂籾数が少ないものが多く、結果として収量性に欠くものが多い。「みねはるか」は「コシヒカリ」熟期でありながら、外観品質が籾数の影響を受けにくい、貴重な高温耐性品種であるといえる。
 
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参考資料
坂 紀邦,寺島竹彦,工藤 悟,加藤恭宏,杉浦和彦,遠藤征馬,城田雅毅,井上正勝,大竹敏也.いもち病高度圃場抵抗性を有する水稲新品種「みねはるか」.愛知農総試研報39: 95-109 (2007)
坂井 真,田村克徳,森田 敏,片岡知守,田村泰章.早植えとフィルム被覆処理による水稲の高温寡照耐性の評価法.日作紀80(別2):250-251(2011)
本庄弘樹,坂 紀邦,伴 佳典,杉浦直樹,杉浦和彦,谷 俊男.水稲品種「みねはるか」の愛知県平坦部における高温登熟性の実態調査.愛知農総試研報45(印刷中)

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