小麦「ネバリゴシ」に対する開花期以降の高温と湛水が子実肥大に与える影響とその軽減対策 | 2012-01-16 |
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●青森県産業技術センター 農林総合研究所 工藤忠之 |
背景と概要 | 近年、青森県では夏期の高温や多雨が影響したものと考えられる、小麦の収量低下・充実不足による品質低下が問題となってきている。特に、小麦の登熟期に当たる6月~7月が高温年であった平成22年産の青森県産小麦は、作況指数64、1等比率58.7%となり、その影響が顕著であった。そこで、小麦「ネバリゴシ」に対する開花期以降の高温と湛水が子実肥大に与える影響とその軽減対策について、ポット試験と圃場試験において検討した。 ポット試験では、子実肥大不良を発生させる開花期以降の高温・湛水時期の検討と追肥による軽減対策、圃場試験では、耕種的な栽培要因による軽減対策について検討した。試験実施時の開花期以降の気温は、平成21年が6月第5半旬を除き、平年並みを下回り、平成22年が登熟期間をとおして平年並みを上回る高温年となった(表1)。   表1 半旬別平均気温及び最高気温(黒石アメダス)
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症状 | 登熟の後半、枯れ上がりが早まり、粒の肥大が阻害され、千粒重及び粒厚の低下をもたらす(図1、2)。  
図1 高温処理が成熟期、粒厚割合及び千粒重に及ぼす影響(ポット試験) 左:平成21年、右:平成22年 (クリックすると拡大します)  
図2 湛水処理が成熟期、粒厚割合及び千粒重に及ぼす影響(ポット試験)左:平成21年、右:平成22年
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原因 | ポット試験の結果、開花期以降の高温で枯れ上がりが早まる傾向があり、特に、開花期後7日から5日間の高温及び開花期後14日から3日間の湛水で顕著に子実肥大が阻害され、粒厚2.2㎜上割合及び千粒重が低下した(図1、2)。
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対策 | ポット試験において、粒の肥大が顕著に阻害された開花期後7日から5日間の高温と、開花期後14日から3日間の湛水した処理に対する追肥及び尿素2%溶液葉面散布の効果を検討した。対照区と同じ2回追肥では、高温処理により、対照区に比べ子実重が9割程度となり、千粒重及び粒厚割合も低下したが、尿素葉面散布を追加することで、千粒重及び粒厚割合は対照区並みに向上した。湛水処理では、2回追肥では対照区に比べ子実重が5割程度となり、千粒重及び粒厚割合も低下し、尿素葉面散布しても子実重、千粒重及び粒厚割合の向上効果は小さかった(図3)。湛水に対しては追肥の効果は小さく、圃場排水対策が先決すべき対策であると考えられた。  
図3 追肥による子実重、千粒重及び粒厚割合に及ぼす影響(ポット試験 平成22年) (クリックすると拡大します)   圃場試験において、耕種的な対策について検討した。試験を行った平成22年は高温年であったが、粒厚割合及び千粒重の低下は比較的軽微で、各栽培要因の効果は小さかったものの、各々の栽培要因で粒厚割合及び千粒重の向上が見られた(表2)。   表2 子実肥大不良に対する栽培要因の軽減効果(圃場試験 平成22年)
  以上の事から、 ①酸性土壌を矯正する。 ②適正な追肥を実施(青森県では幼穂形成期と止葉抽出期に葉色に応じて2回追肥(窒素成分量で幼穂形成期2kg/10a+止葉抽出期2~4kg/10a)する。 ③開花期から7日おきに3回、2%尿素溶液100~150L/10a葉面散布する。 ④地下水位が高く、排水不良の圃場では、畝立て栽培を行う。 をすることで、開花期以降の高温及び湛水による子実肥大不良に対しての軽減対策になり得ると考えられる。
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参考資料 | 平成23年度青森県指導参考資料「小麦の子実肥大に対する高温と湛水の影響」 青森県産業技術研究推進会議刊行平成23年度普及する技術・参考資料 (青森県産業技術センター 農業総合研究所 >>ホームページ)
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