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記録的に早い梅雨明けと早い猛暑(あぜみち気象散歩92)   2022-06-28

●気候問題研究所 所長 清水輝和子  

 
6月の記録的猛暑と早い梅雨明け
 6月27日、気象庁は関東甲信と東海、九州南部の梅雨明けを発表した。関東甲信地方は2018年の6月29日より早く、1951年の統計開始以来最も早い梅雨明けとなった。東海、九州南部も2番目に早い梅雨明けだった。28日には九州北部、中国、四国、近畿、北陸で梅雨が明けた。いずれも6月の梅雨明けは初めてのことで、統計史上最早だった。北陸では平年は7月23日頃なので平年より25日も早かった。
 関東では梅雨明け前から気温が上昇し、夏のような天候が続き、6月26日群馬県伊勢崎市では40.2℃を記録した(図1)。観測史上6月として国内で初めて40℃を超えた。梅雨前線は日本海から北日本に南下したが、次第に弱まり、26日には地上天気図から消えて、南から太平洋高気圧におおわれ夏型の気圧配置になった。
 

記録的高温 真夏日474地点、猛暑日64地点
図1 日最高気温(2022年6月25日)(気象庁)
 
梅雨寒から一転猛暑
 6月の前半は全国的に気温が低く、東日本の太平洋側と北日本ではオホーツク海高気圧が現れたので、北東からの冷たい風が吹いて梅雨寒が続いた(図2、3)
 上空の天気図では東シベリアに高気圧が停滞したため、寒気は日本付近から東海上へ南下し、西日本と南西諸島も低温傾向だった(図3、4)。5月27日と6月2~3日には季節外れの強い寒気が上空を通り、東北から関東の広い範囲で雷雨となりヒョウが降った。宮城県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県で、梅や桃、梨などの果樹、小麦や露地野菜、及び農業施設にヒョウ害が発生した。
 
 

オホーツク海高気圧現れ、北東風吹き梅雨寒
図2 地上天気図(2022年6月6日12時)(気象庁の図をもとに作成)
 

5月北暖西冷型、6月梅雨寒、のち猛暑
図3 地域平均気温平年偏差5日移動平均時系列(2022年4月~6月)(気象庁)
 

6月前半は寒気南下し、梅雨寒、雷雨と降ヒョウ
図4 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)2022年6月上旬 (気象庁の図をもとに作成)
:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 
 寒暖の変動の大きかった春に続き、6月も気温が大きく変動した。6月半ば過ぎには肌寒い梅雨空から一転して気温が上昇し、下旬には関東地方で記録的猛暑と夏のような青空が広がった。
 伊勢崎市で40℃を超えた25日は、フェーン現象の影響もあった。梅雨前線が中国大陸から南下して日本海沿岸に停滞し、太平洋高気圧が日本の南に張り出した(図5)。梅雨前線に向かって南西の風が吹いたので、関東では太平洋高気圧の暖かな空気に覆われたところへ、フェーン現象により山を越えた空気が吹き下りて、気温がさらに上昇した。暑さに慣れていない体には急激な気温上昇は負担になり、熱中症で救急搬送される人が急増した。
 

梅雨前線に向かって南西風吹き、フェーン現象により気温上昇
図5 地上天気図(2022年6月25日12時)(気象庁の図をもとに作成)
 
太平洋高気圧とチベット高気圧強まる
 本来ならば本格的な梅雨を迎えて、豪雨に警戒しなければならない時期だが、この夏空ときびしい暑さはどういうことなのだろうか。
 6月前半は、太平洋高気圧が弱く南東海上に後退していた(図4)。それに加えて、北極寒気は放出期になり、中国北部から日本、北太平洋の中部にかけて寒気が南下したため、梅雨寒や降ヒョウ被害に見舞われた。寒気は6月半ば過ぎから弱まり、代わって太平洋高気圧が強まって、25日には日本の南海上まで張り出した。上空5000m付近でも太平洋高気圧が強まり本州の南岸まで張り出し、北・東日本の東海上では上空の高気圧が強まった(図6)。そのうえ、さらに上空の10000m付近のチベット高気圧も強まった(図7)。この高気圧は通常はチベット高原の上空で強まり、日本に張り出してくるのだが、近年は日本付近の上空に独立してセル状に高気圧が現れることがある。温暖化の影響で10000m上空まで高気圧が強まっているようだ。6月だというのに、下層から上空まで強い高気圧に覆われて、記録的に早い猛暑と早い梅雨明けとなった。
 

太平洋高気圧強まる
図6 500hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)(2022年6月25日)(気象庁の図をもとに作成)
:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 

10000m上空にも高気圧に覆われる
図7 100hPa北半球平均天気図 高度と平年偏差(上空約10000m付近)(2022年6月25日)(気象庁の図をもとに作成)
:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
世界各地で早い熱波
 日本ばかりではなく、欧州も早い熱波に見舞われた。6月13日にスペインでは北アフリカから熱気の塊が流れ込んで気温が40℃を超え、1981年以来最も早い熱波が発生した。西部や東部、中部の各地で山火事が発生し、およそ1700人が避難を余儀なくされたと報じられた。
 英国では17日、各地で気温が40℃に達した。フランスでも18日、西部のモンドマルサンで41.0℃、ボルドー・メリニャックで40.5℃と40℃を超えた。フランス気象庁によると、1947年の観測開始以来、最も早期の熱波到来だという。ドイツでは東部のドレスデンやフローンスドルフなどで19日に39.2℃を記録。ベルリン郊外では2か所で森林火災が発生した。
 
 図8の欧州上空の天気図を見ると、アフリカの亜熱帯高気圧が強まり、欧州付近に張り出して覆った。
 

アフリカの亜熱帯高気圧が強まり欧州を覆う
図8 500hPa平均天気図 高度と平年偏差(上空約5000m付近)(2022年6月17日)(気象庁の図をもとに作成)
:平年より高度が低く、気温が低い
:平年より高度が高く、気温が高い
 
 
 欧州ではここ数年、毎年のようにアフリカの亜熱帯高気圧による熱波と森林火災に見舞われている。フランスは2019年41.9℃を観測したが7月25日だった。2018年は37.0℃の猛暑があったが8月だった。熱波の出現は早まっている。幸い今年6月の熱波は19日から低気圧が通り、雨が降っておさまった。しかし、今後再び亜熱帯高気圧が強まり、熱波が再来する可能性がある。
 
記録的猛暑、のち暑さ和らぐ
 6月末は梅雨前線が北海道に北上し、東北南部も梅雨が明けそうだ。一方、梅雨前線は北海道に北上して活動が活発になり、北海道と東北北部では局地的大雨の恐れがある。
 
 梅雨明けが早いと梅雨の期間は短い。東海は13日間、九州南部は16日間、関東甲信は21日間と、いずれも過去最短となっている。6月の降水量は東・西日本で平年の40~70%と少ない地域が多い(図9)。西日本では5月から少なく、日本海側では月降水量が平年の40%以下と、かなり少なかった(図10)。高知県の早明浦ダムでは貯水量が平年の半分以下に低下するなど、各地で水不足の心配されている。夏至を過ぎたばかりなので、1年で最も昼間の時間が長い時期だ。晴天が続くと例年より日照時間が多くなり、ダムやため池などの貯水池では蒸発量が増え、貯水量がより減少する恐れがある。
 

6月の降水量本州で平年より少ない
図9 降水量平年比%(2022年5月30~6月26日)気象庁
 

5月は西日本で少雨
図10 降水量平年比%(2022年5月)気象庁
 
 太平洋高気圧は7月1日頃をピークに強まり、猛暑と夏空が続く見込みだが、6日頃から南海上に後退する予想。7月上旬後半には暑さは和らぎ、にわか雨が降りそうだ。
 

 
 
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